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社説・コラム

社説 プーチン大統領圧勝 懸念増す「強いロシア」

 ロシアのプーチン大統領が再選を決めた。通算4期目に当たる。任期満了の2024年まで首相だった期間も含めると四半世紀近い長期支配となる見通しである。欧米への対決姿勢など「強いロシア」を打ち出して、愛国心に訴え、支持を集めた。

 だが国内経済は停滞し、国民の不満は根強い。米国大統領選への介入疑惑や、英国での元情報機関員への襲撃事件で、欧米との摩擦も深刻度を増す。今後も対外強硬路線を取るのか、国内の求心力をどう維持するのかが問われる。

 「ロシアには大きな成功が待っている。ロシアの名の下に共に大事業を成し遂げよう」。当選を決めたプーチン氏はモスクワで団結を呼び掛けた。

 強気の目立つ選挙戦だった。ウクライナからクリミア編入を強行し、欧米諸国から反発を受けながらも強硬姿勢を貫く。投票日を編入から4年目に設定。先週そのクリミアを訪れ、編入を自らの業績として強調した。

 「プーチン1強」の状況で再選は確実だったが、高い投票率と得票率で再選されることで、政権の正当性を誇示したかったようだ。長期政権の腐敗を批判する反対派がボイコット運動を繰り広げる中、投票を促す工作を重ねた。

 結果、約76%という高い得票率での大勝である。共産党候補などを圧倒。前回の12年大統領選での得票率約64%も上回り、「結果は高い信頼の表れだ」と、勝利宣言で誇示した。

 安定政権に期待する国民も少なくはなく、盤石な政権基盤を築いたのは間違いない。しかし対立勢力を排除する動きが今回も目立った。反政権デモを繰り返していた野党指導者は立候補を却下された。投票にも不正があったと、野党勢力は選挙の正当性を疑問視している。

 治安機関を出身母体とするプーチン氏の、手段を選ばぬ強権ぶりは、民主主義を形骸化させるとともに、内政にも外交にも影を落としている。英国で起きた元ロシア情報機関員への神経剤による襲撃事件も、関与が指摘される。

 内政では経済低迷に国民の不満が高まる。クリミア編入で欧米の経済制裁を招いた。強硬路線では、打開策を見いだすどころか、孤立を深めるだけだ。

 「強いロシア」を強調するためか、最新の戦略核兵器の開発までぶち上げた。今月初めの年次報告演説で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など新核兵器を開発したと発表したのだ。

 新ICBMは米のミサイル防衛網では迎撃できないとして、「ロシア封じ込めは失敗した」と宣言した。いたずらに緊張を高めるばかりか、核兵器廃絶を進める上でも看過できない。北朝鮮に対する核放棄の働き掛けが求められてもいるのに、何と無責任な姿勢であろうか。

 日本との間には北方領土問題がある。ロシアが米国製の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」導入を警戒しており、問題を複雑化している。安全保障問題に絡めず、共同経済活動を軸に、交渉に臨むよう粘り強く求めねばなるまい。

 国境を接する中国でも国家主席の任期規定を撤廃し、長期支配が可能になった。力による政治、支配は国民の弾圧と対外的な緊張を生みかねない。国際協調への転換を促す必要がある。

(2018年3月20日朝刊掲載)

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