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社説・コラム

天風録 『プーチン再選』

 水爆を積んだ爆撃機が次々に米空軍基地を飛び立つ。標的はソ連。正気を失った基地司令官の指示だ。ホワイトハウスは急ぎ中止命令を出すが、通信機が壊れた1機と連絡が取れない▲核で脅し合う愚かさを米英合作の映画「博士の異常な愛情」は描く。1964年にスタンリー・キューブリック監督が発表してから約半世紀後、ソ連崩壊後の超大国を率いる人物がDVDを見た。「当時と状況は変わらない」と評する一方、人類の終末を避けねばならないと誓う▲ロシアのプーチン大統領である。選挙で通算4選を果たした。首相時代を含めると、四半世紀近い長期支配となる。「現代の皇帝」と称される力の源泉は建前と本音を巧みに使い分ける話術だとか▲DVDを見た後、米放送局のインタビューでは両国の緊張緩和を唱えながら、選挙中の演説では核戦力の増強を誇示した。国威発揚を軍拡に求めるのは冷戦時代への逆戻りに他ならない▲一方で映画の基地司令官のような狂気が、今の国際社会にも広がっていないか。報復のきのこ雲が次々上がる映像とともに物語のエンディングでは「また、会いましょう」と歌う曲が流れる。核なき世界の実現を急がねば。

(2018年3月20日朝刊掲載)

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