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少ない米軍情報浮き彫り 艦載機移転完了前倒し 住民 騒音に不安も

 中国四国防衛局は23日、米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機の移転計画で、残る主力戦闘攻撃機2部隊が早ければ24日以降、移転を始めると地元自治体に伝えた。昨年11月から12月にかけての部隊移転に続き、移転日程は再び当初計画から前倒しされた。理由について防衛局は前回同様、「米軍の運用状況」とだけ説明し、米軍に関する情報の少なさがあらためて浮き彫りになった。基地周辺の騒音測定回数が増える中、住民から不安の声も上がる。(馬上稔子、藤田智、坂本顕)

 当初計画で5月ごろとされていた最後の2部隊の移転。米軍の運用状況を理由としたスケジュール変更に、福田良彦市長は報道陣に「市としてもそういう受け止めをしている」。山口県庁で記者会見した村岡嗣政知事も「やむを得ない」と理解を示した。

 一方、防衛局側は詳細な移転日や艦載機がどこから飛来するのかなどについて「具体的な情報には接していない」「米側に確認している」と繰り返した。  昨年8月に始まった厚木基地(神奈川県)からの艦載機移転。同11~12月に本格化し、FA18スーパーホーネット戦闘攻撃機2部隊とEA18Gグラウラー電子戦機部隊、C2輸送機1機が配備された。うちEA18GとC2の移転は当初、1月ごろを予定していた。

 また、これらの移転の際、事前に岩国へ飛来していた11機は、米側の判断でそのまま「移転」と見なされた。反対派の住民たちから「事実上の事後報告」との批判が相次いだ。福田市長は「情報が入り次第、伝えるという国のスタンスを信頼するしかない。市としてもやれることはやっていく」と述べた。

 基地周辺では主力部隊の移転以降、騒音測定回数が増加している。基地南側の尾津町に市が設置している測定器は1月に883回の騒音を測定。2010年の滑走路沖合移設以降、月別で最多になった。2月までの3カ月間では、同地点で2136回、基地北側の川口町で1930回。いずれも前年同期比の約2・3倍で、沖合移設以降の同期比で最多となった。

 市中心部に住む会社員小林真一郎さん(53)=麻里布町=は「うるさいと思う日は増えた。事件事故の増加が心配」と懸念する。一方、由宇町の飲食店店員福本繁生さん(53)は「騒音は気になるが、米軍関係者の増加は国際交流都市になるチャンス」と期待ものぞかせた。

 三笠町1丁目の小中幹男自治会長(71)は「『基地との共存』を語るのなら、市は米軍機の飛行に細かな制約を求めるなど住民生活に寄り添う姿勢を取ってほしい」と注文した。

異なる確認事項 市と対応検討へ 市民団体に防衛局

 米軍岩国基地の運用マニュアルと地元との確認事項が異なる問題で、中国四国防衛局は23日、「マニュアル内容の把握に努めている」とし、岩国市と相談して今後の対応を検討する考えを示した。マニュアルの確認を要請していた市民団体との面談で明らかにした。

 防衛局地方調整課の上地良政課長補佐が、「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会」(廿日市市)のメンバーと広島合同庁舎(広島市中区)で面会。2月末の要請に関し、上地課長補佐は「マニュアルが作成されていることは承知している」などと答えた。一方、「正月三が日は訓練を行わない」など、確認事項に反する内容の有無については言及しなかった。

 同会は「米側にきっちりとただしてほしい」と改めて求めた。

 終了後、上地課長補佐は中国新聞の取材に「マニュアルは米軍の基地運用のためのもの。確認事項と性質は異なり、内容について逐一指摘することは考えていない」と述べた。

(2018年3月24日朝刊掲載)

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