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再び全員原爆症認定 東京高裁 国控訴を棄却

 広島や長崎で被爆した6人を原爆症と認めなかった国の処分は違法だとして、茨城県などの被爆者や遺族が処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は27日、全員を原爆症と認めた一審東京地裁判決を支持し、国の控訴を棄却した。判決理由では「がんなど6人の病気は、一般的に放射線被ばくとの関連性が認められる」と指摘し、国の却下処分は違法だとした。

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 広島や長崎で被爆した6人を原爆症と認めなかった国の処分は違法だとして、茨城県などの被爆者や遺族が処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は27日、全員を原爆症と認めた一審東京地裁判決を支持し、国の控訴を棄却した。

 判決理由で後藤博裁判長は「がんなど6人の病気は、一般的に放射線被曝(ひばく)との関連性が認められる」と指摘し、被爆や発症の状況を個別に検討。「いずれも放射線によって発症が促進されたと高い確度で言える。国の却下処分は違法だ」と述べた。

 判決によると、原告は76~87歳の男女5人と、2015年に亡くなった男性の遺族。6人は3~14歳で被爆し、がんや心筋梗塞、脳梗塞などを発症。原爆症認定を申請したが、10~12年にいずれも却下された。

 15年10月の一審判決は、提訴した17人全員を原爆症と認定した。国はうち6人について控訴。医師5人を証人尋問し、6人には高血圧などの危険因子があり、発症は放射線の影響ではないと主張した。

 高裁は「高血圧や糖尿病、高脂血症は、それ自体被曝と関連性がある。放射線の影響と関係なく発症したとは言い切れない」と退けた。

「一日も早く解決を」 被爆者 条件緩和訴え

 国の控訴を棄却した27日の東京高裁判決を受け、原告や支援者は都内で集会を開き、原爆症の認定条件の緩和を訴えた。広島高裁で同様の訴訟の審理を控える原告関係者も「認定への追い風になる」と期待した。

 東京高裁前では判決を受け、支援者たちが「全員勝訴」などの垂れ幕を掲げた。その後、国会内であった集会には都内の被爆者を中心に約80人が参加した。

 ただ、原告は体調不良などで欠席が続き、参加できたのは長崎で被爆した坂本治子さん(76)=東京都北区=だけ。国が積極認定の対象としていないバセドー病を患う坂本さんは「他にも悩んでいる人がいる。早急に認定を」と訴えた。弁護団の内藤雅義弁護士は「積極認定する対象疾病を広げるべきだ」と強調。近く日本被団協などと連名で基準緩和を国に求める方針だ。

 広島地裁では昨年11月、心筋梗塞などを発症した被爆者12人が原爆症認定申請の却下処分取り消しなどを国に求めた訴訟で全員が敗訴し、うち11人が控訴している。弁護団長の佐々木猛也弁護士たち4人が広島市中区で記者会見し「放射線の影響を否定しきれない場合は広く認定するという判決。今後、高裁で始まる審理に役立つ」と歓迎した。

 広島の爆心地から2・4キロで被爆し、白内障を発症した原告団長の内藤淑子さん(73)=安佐南区=は「被爆者は高齢化し、苦しみ続けている。被爆者の気持ちに寄り添い、一日も早く全面解決を」と求めた。(武内宏介、渡部公揮)

(2018年3月28日朝刊掲載)

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