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原発事故想定防災訓練 「車両への誘導」まで 島根県 施設入所者の避難

 島根県は28日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故を想定して来年1月26日に開く原子力防災訓練について、新たに盛り込む社会福祉施設入所者の避難を「車両への誘導」にとどめ、避難所へは移動させないことを明らかにした。「まず、施設の避難手順を徹底させる」としている。

 福島第1原発事故を受け、全国の原発立地県は広域避難訓練を実施しているが、施設入所者の避難の度合いは対応が割れている。

 佐賀県は、昨年11月と今年10月の訓練で特別養護老人ホームなど計2カ所39人を別の施設や体育館に避難させた。「入所者と職員が避難経験を積むことが重要」(県消防防災課)と、健康状態が良好な人を移動させた。6月の石川県は施設内の一室に約70人を集合させるにとどめ、入所者に見立てた職員だけを運んだ。

 1月の島根県の訓練には、原子力規制委員会が原子力災害対策重点区域とした原発30キロ圏の島根、鳥取両県と両県6市が参加する。約7千人が入所する249施設から原発に近い1施設を選び、玄関先のバスまで入所者を誘導するという。

 県健康福祉総務課は「健康状態の悪化も考えられ実際の避難はハードルが高い。課題を解消し来年度以降は避難も検討したい」としている。実際の事故の際は県内外のホールや公民館にいったん避難させた後で中国、関西、九州地方の施設や旅館に逃げてもらう計画。(樋口浩二)

島根県避難計画「中間的なもの」 松江市長が見解

 松江市の松浦正敬市長は28日、記者会見し、島根県がまとめた中国電力島根原子力発電所(同市)の事故を想定した避難計画を「あくまで中間的なもの」とした上で、国に避難基準の明確化を求める考えを示した。

 松浦市長は、原発5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)内の住民が最優先で避難することを踏まえ「5~30キロ圏の住民は、その間にどう対応するのか。国が明確に基準を示す必要がある」と指摘。年度内に改定する市の地域防災計画への反映についても「国が基準を示さなければ完全なものにならない」とした。

 また「『避難先は決まったがどんな場所か分からない』との不安の声もある」として、市民と避難先の地区住民の交流会など、不安の軽減に向けた対策を検討する考えも示した。

(2012年11月29日朝刊掲載)

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