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峠三吉ら描いた群像劇「河」 生誕100年公演の記録集刊行

 広島文学資料保全の会(土屋時子代表)が中心となり、昨年12月に広島市西区の横川シネマで上演した群像劇「河」の公演記録集が刊行された。詩人の峠三吉と同志たちを描き、反響の大きかった舞台。キャストやスタッフ、来場者の寄稿のほか、上演台本を収録し、公演のDVDも付いている。

 「河」は、昨年が没後30年だった劇作家の土屋清が創作。峠の生誕100年を記念し、広島では約30年ぶりに再演された。2日間の計4公演で約520人が観劇した。

 演出を手掛け、峠の妻の春子役を演じた土屋代表は、何度も投げ出しそうになった稽古の日々の回想を寄せた。「はぐいい(もどかしい)ねえ! それでも、それでも書きつづけるしかない」といった、峠たちのせりふに励まされたとつづる。

 今公演の特徴の一つが、峠の詩「その日はいつか」の群読で幕を閉じる演出だった。同会顧問の水島裕雅・広島大名誉教授は、「われわれ個人がその歴史の一部であり、それを変えていくのもわれわれ個人の力であると言えないだろうか」と、寄稿で考察している。

 土屋代表は「上演の記録にとどまらず、核時代の今をどう生きるかについてつづった論考も収めている。出演者たちの熱い思いとともに伝われば」と話す。9月8、9の両日、京都市での再演も予定している。

 同会などでつくる「河」上演委員会の発行。A5判、160ページ。1200円(送料180円)。同会☎082(291)7615。(石井雄一)

(2018年4月19日朝刊掲載)

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