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老後サポート 中国残留邦人 孤立防止へ中国語ボランティア募集

介護施設や家庭を訪問

 終戦時に旧満州(中国東北部)などに取り残され、戦後帰国した中国残留邦人の孤立を和らげようと、支援団体が「語りかけボランティア」活動に取り組んでいる。県内在住の残留邦人の平均年齢は76歳。言葉が通じにくい中で過ごす老後を、少しでも明るく照らせたら―。中国語で対話できる人を募っている。(栾暁雨)

 厚生労働省の委託事業で、残留邦人の生活をサポートする中国・四国中国帰国者支援・交流センター(広島市南区)が実施。当事者が通うデイサービスセンターなどに中国語ができるボランティアを派遣している。

 「今日の体調はいかが」「食事はおいしい?」。西区のデイサービスセンターかりん。ボランティアの斉藤泰子さん(62)が中国語で、利用者の宮部玲子さん(85)と佐藤春子さん(76)に話し掛ける。宮部さんは1990年に中国吉林省から、佐藤さんは97年に寧夏省から帰国した。

 50代で帰国した2人にとって、言葉の壁は厚い。近所との交流は乏しく、足が不自由で外出も滞りがちだ。楽しみはデイサービス。職員や他の利用者に囲まれて過ごす時間は、寂しさを忘れられるという。ただ、十分な意思疎通が難しいことも。斉藤さんの訪問に「いつも楽しみにしている。慣れた言葉で話すと、気持ちがすっきりする」と喜ぶ。

 昨年10月、センターが管轄する中四国地方のうち広島県で先行して始めた。日本人や残留邦人の子・孫を中心に34人が登録する。

 施設の了解を得て月に1、2回訪問。30分から1時間程度、話し相手や通訳を務め、レクリエーションにも付き添う。訪問介護ではヘルパーに同行する。

 残留邦人の中には、言葉や生活習慣の違いから介護サービスの利用を控える人もいる。センター職員の金山梅子さん(45)は「苦労して帰国した祖国で、心穏やかに老後を過ごしてもらうための環境整備は急務」と話す。

 ボランティアは、日常会話程度の中国語が話せること、事前研修への参加などが条件。利用を希望する残留邦人からの問い合わせも受け付ける。同センター☎082(250)0210。

中国・四国中国帰国者支援・交流センター
 全国7カ所の支援施設のうちの一つで、2006年に県社会福祉協議会が厚生労働省から委託を受けて設立した。現在、県内で暮らす残留邦人約170人や、千人以上いるとされる家族を支援する。1932年の旧満州の建国以降、「満蒙(まんもう)開拓団」として国策で派遣された県内の入植者は1万1千人以上で、全国で8番目に多い。

(2018年4月25日朝刊掲載)

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