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衆院選 原発ゼロ 受け皿は 手順・コストあいまい 有権者から不満

 原子力に対する国民の意識を大きく変えた福島第1原発事故。収束は見えず、東京の首相官邸前では毎週金曜の夜、脱原発を訴える人たちがデモを繰り返す。そのうねりは中国地方にも及ぶ。衆院選の主要争点であるエネルギー問題で多くの政党が「原発ゼロ」を打ち出すものの、実現への道筋はばらばらで、はっきり見えない。脱原発を求める民意の受け皿は―。(村田拓也、樋口浩二)

 3連休の最終日だった11月25日、広島市中区の本通り商店街に「原発反対」のコールが響いた。市民団体「TwitNoNukes(ツイットノーニュークス)中国」が短文投稿サイトのツイッターで呼び掛けたデモ。ことし5月に始まり、今回で4回目だ。

 メンバーの西区の会社員田野淳路さん(45)は被爆2世。原発事故まで運動に関わったことはない。「事故で16万人が故郷を追われた。原発のない未来を実現するため、できることから」。そんな思いでデモに加わる。

 公示直前に「卒原発」を掲げる日本未来の党が結成され、有権者にとって選択肢が増えたと感じる。衆院解散直後は、消費税増税や環太平洋連携協定(TPP)参加の是非が論戦の中心になりかねないと思った。「原発の是非を最大の争点とし、原発をなくす議員を増やしたい」

見えない覚悟

 政府・民主党は「2030年代に原発ゼロを目指す」の戦略をまとめながら、閣議決定できなかった。着工済みの原発の建設継続も認めた。日本維新の会は当初、「30年代までの全廃」の旗を掲げたが、太陽の党の合流を機に後退した。

 政権奪還を狙う自民党は政権公約で「10年以内に電源構成のベストミックスを確立させる」と、原発維持に含みを持たせる。

 「あいまいな目標で脱原発を進める覚悟が感じられない」。中国電力島根原発がある松江市鹿島町の中村栄治さん(76)は民主党を応援するが、原発政策には不満を持つ。

 00年まで旧鹿島町議を4期16年務めた。一貫して原発反対の立場だ。事故後、ストップした3号機の建設続行を政府は認めた。「40年運転」の原則に照らすと50年代まで運転する計算になる。「明らかに矛盾。ずるずる稼働するのが一番怖い」

被爆地の代表

 「被爆地の代表として党の方針に反してでも原発ゼロを訴えるべきだ」。広島市西区の映像制作業内藤紀彦さん(65)は解散前、応援する広島2区の自民党元職が開いたミニ集会で迫った。元職は「原発はない方がいいが、経済界を中心に反論も強い」と答えた。

 元職は公示日の4日、出陣式で「原発について私自身も明快な答えを持っていない。皆さんと議論し、間違いない方向を選択したい」と呼び掛けた。

 脱原発を進めるのか、原発依存を続けるのか。その手順とコスト負担はどうなのか。内藤さんは「原発事故から1年半余りが過ぎたが検証が十分されていない。これから日本は原子力とどう向き合うべきなのか、候補者と政党は衆院選で議論を深めてほしい」と話す。

<原発をめぐる主な政党の政策>

民主 2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入
自民 10年以内に電源構成のベストミックスを確立
未来 原発稼働ゼロから遅くとも10年以内の完全廃炉・完全卒業
公明 可能な限り速やかに原発ゼロを目指す
維新 既設炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトすることになる
共産 即時原発ゼロ みんな 電力自由化による市場原理での原発ゼロ
社民 サヨナラ原発、エネルギーシフトで原発ゼロ

(2012年12月7日朝刊掲載)

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