連載・特集

イワクニ 地域と米軍基地 続フェンスのそばで <中> 不満

受信料助成「なぜ廃止」

艦載機移転と時期重なり

 米軍岩国基地(岩国市)に近い記者の自宅マンションのポストに2月、防衛省から通知書が届いた。NHK受信料の助成を8月末から順次打ち切るとの内容だった。米軍機などの騒音でテレビの音が聞こえにくいことを考慮し、基地周辺の世帯に対して36年続けていた国の助成制度を見直すという。周辺住民に今も不満がくすぶっている。

 「現実に騒音が悪化している。あり得ない」。今月2日夜、基地北側に広がる東地区の公民館。集まった自治会長たちが、中国四国防衛局の職員に口々に怒りをぶつけた。住民の求めに応じ、防衛局が東地区で初めて開いた説明会だった。

16施設周辺対象

 年間助成額は年間受信料(地上契約)の半額の6995円。岩国を含む全国16施設周辺で打ち切られる。住宅防音工事などが進む中、助成の対象区域が変わらない点を会計検査院から問題視されたことが背景にある。「防音工事への重点的な予算配分や交付金で負担に応えたい」。防衛局側は理解を求めた。

 ただ岩国では、厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機約60機の移転と、打ち切り決定の時期が重なった。決定前に地元説明もなく、住民には唐突とも映った。

 「旋回するとエンジンがこっちに向くでしょう。地鳴りのように響く」。滑走路北端から北へ2キロ。説明会に出席していた桂町の自治会長、黒田耕作さん(85)が後日、自宅マンションに招いてくれた。4階のベランダから、離陸した米軍機が向かってくるように見える。東方向に機体を大きく振った後、爆音が押し寄せた。

 助成継続の嘆願書を国に送った人もいた。記者の自宅に近い旭町で自治会長を務める為重英雄さん(67)。「過度の負担を受け入れているにもかかわらず、それを一蹴する受信料の助成廃止は断固受け入れらない」。文面に憤りがにじむ。

 40年近く基地内で働いている為重さん。沖縄からのKC130空中給油機の移転、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備…。国や市の基地政策に協力してきたとの思いは強い。

騒音予測に疑念

 2010年の滑走路の沖合移設前と比べて騒音は相対的に減少し、住宅防音工事の助成対象基準である「うるささ指数(W値)」75以上の区域も4割に減少する―。国は、艦載機移転後の基地周辺の騒音状況をそう予測した。

 しかし、予測が実態に沿わないのではないかと、為重さんは疑念を募らせる。移転後の詳細な騒音調査がまだ始まってもいない中、全国一律で助成打ち切りが決まった。「国の担当者も、ここに住んでみればいい」

 住民の憤りの根源は何か。艦載機移転に伴う騒音悪化の不安だけではない。国の姿勢に対するいら立ちも大きい。艦載機移転をはじめとする基地の機能強化は国策として進み、地元の声は届きにくい。「また頭ごなしの決定か」。そんな嘆きをあちこちで聞いた。

 「ゼニカネの問題じゃない。騒音という公害に対する国の認識を問うてるんだ」。東地区の三笠町で自治会長を務める小中幹男さん(71)の訴えが、すとんと腹に落ちた。(藤田智)

基地周辺のNHK受信料助成制度
 1982年、防衛省が指定した基地などの周辺区域で始まった。米軍機や自衛隊機などの騒音が与える生活の影響への考慮が理由。岩国基地周辺では2017年度時点、和木町を含む約6千世帯が対象で、年間計約4200万円。防衛省は17年12月、会計検査院の指摘も踏まえ、「騒音状況が変化し、住宅防音工事も進んだ」として岩国基地を含む全国16施設で見直しを決めた。防音工事が済んだ世帯は8月末に助成を終了する。一部防音工事の世帯は9月から減額し、24年3月末で終了。工事未着工の世帯は実施まで継続する。

(2018年5月13日朝刊掲載)
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