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イワクニ 地域と米軍基地 平和都市の周りで <2> 専守の枠は

くすぶる「空母化」構想

呉に海自最大級艦配備

 呉市の海上自衛隊呉基地に5月下旬、ひときわ大きな艦艇が入港した。海自最大級の護衛艦「かが」。大阪での一般公開後、母港への帰投だった。全長248メートル。ヘリコプター5機が同時に発着でき、艦首から艦尾まで貫く甲板を備えた姿は、まるで空母だ。

 昨年3月に就役した「かが」は、同じくヘリを搭載する「いずも」型護衛艦の2番艦。いずれの就役時にも中国メディアから批判の声が上がった。日本が旧海軍の艦船名を「復活」させたとともに、「空母を保有する」ことへの反発からだった。

 日本は、憲法上の立場から「攻撃型空母の保有は許されない」としてきた。いずも型について海自は、戦闘機などの発着機能がないため空母に当たらないとの見解を示している。

後方支援も想定

 呉基地は広島市まで直線距離で約20キロ。そこに配備されているいずも型の「空母化」構想は、政府内にくすぶる。

 4月下旬、防衛省は調査報告書を公表した。いずも型で、米軍の最新鋭ステルス戦闘機F35Bなどを運用できるか調べたものだった。「空母化」とともに、米軍の後方支援も想定されていた。在日米軍基地で垂直着陸が可能なF35Bが配備されているのは現在、岩国基地(岩国市)だけだ。

 「航空機運用能力の向上に対する高い潜在能力を有している」。報告書はそう評価した。ただ、いずも型がF35Bを搭載するには最低限、甲板の改修が必要とされている。その費用や工期、改修内容などは黒塗りにされていた。

 報告書は、いずも型を建造した造船会社ジャパンマリンユナイテッドが防衛省の委託を受けてまとめた。同省は「今後の防衛力の在り方を広く調査し、関連情報を収集する一環。空母化やF35Bの導入に向けた具体的な検討ではない」と説明する。

 しかし、海自呉地方総監を務めた金沢工業大虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授(60)は「調査は日米同盟に基づき、いずも型が海上での米軍の中枢基地として使えるかを探る一環」とみる。「今後、米軍のF35Bがいずも型で訓練をすれば、日米同盟強化を各国に印象付けられる。戦争をしない、させないという国際的なメッセージにもなる」

初の武器等防護

 海自呉基地には「かが」をはじめ、護衛艦「さざなみ」、輸送艦「しもきた」など12種の艦艇計37隻が配備され、国内の海自基地で最多を誇る。さざなみは昨年5月、太平洋で実施された、安全保障関連法に基づき米軍の艦艇を守る「武器等防護」に合流。海自初の武器等防護だった。しもきたも今年4月、九州西側の海域で米軍の艦艇数隻と共同訓練をした。

 呉基地には今後、潜水艦の増隻も計画されている。日米連携の一翼を担う基地として存在感はさらに増しそうだ。

 市民団体「ピースリンク広島・呉・岩国」の新田秀樹世話人(54)は「呉基地が岩国とさらに密接につながり、米軍の後方支援を担う可能性が高まっている」と懸念を強める。揺らぐ日本の「専守防衛」の姿は、呉に色濃く投影されている。(浜村満大)

護衛艦かが
 全長248メートル、幅38メートル、1万9500トン。「いずも」型の2番艦として、昨年3月22日に就役した。乗員は約470人。哨戒ヘリと救難輸送ヘリ計9機を搭載し、ヘリ5機が同時に発着できる。輸送機オスプレイの使用も可能。3・5トンのトラック約50台を積め、同じヘリ搭載型護衛艦の「ひゅうが」型よりも輸送能力は向上した。他の艦船への燃料補給機能や医療設備も備え、災害時などの任務の洋上拠点となる。建造費は約1200億円。

(2018年6月4日朝刊掲載)
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