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山口県内 緊張緩和へ期待の声 米朝首脳会談

朝鮮戦争の記憶 日米関係のように

「在日」の関係者 半島の統一に希望

 米朝首脳会談が実現した12日、山口県内でも米軍岩国基地を抱える岩国市や、多くの在日コリアンが暮らす下関市の住民たちから緊張緩和への期待や歓迎の声が上がった。

 半島まで最短300キロの岩国基地。朝鮮戦争では国連軍の出撃拠点だった。作本敏彦さん(79)=岩国市錦見=は開戦時の1950年、小学6年生。同年9月27日、爆撃機1機が同市横山の自宅近くに墜落し祖母といとこが死亡した。「ばらばらの祖母の遺体を拾った」と目に涙を浮かべる。

 いまも2人の月命日には墓参りを欠かさない。「これからの米朝関係も戦後の日米関係のようになれるはず。今後を見守っていきたい」と力を込める。

 同市川下町の和田正昭さん(74)も「軍用機ががんがん飛んでいた」と振り返る。60年以上たった今も朝鮮戦争はあくまで「休戦」状態。終結へ歩みだした状況に和田さんは「安堵(あんど)した。制裁一辺倒でなく民間交流や経済関係を築けば平和が近づく」と期待する。

 米朝会談では北朝鮮側がミサイル関連実験場の破壊に言及。一方で日本政府は北朝鮮の脅威を名目に地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入を進めてきた。

 候補地の陸上自衛隊むつみ演習場(萩市)が一部立地する阿武町の無職浅野容子さん(65)は「配備を急ぐ意味が全く分からない」と指摘。同町では昨年6月、中国地方で初めてミサイル発射想定の避難訓練もあったが「住民不安をあおっただけ」といぶかる。

 県内最多の在日コリアンが住む下関市。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)県本部では関係者が米朝トップの署名の瞬間をインターネット中継で見守った。在日2世で元委員長の厳章範(オン・ジャンボム)さん(85)は「感激と感動でいっぱい。2人の握手で半島統一が目の前に来たと感じた」と感慨に浸った。(和多正憲、松本恭治、藤田智)

(2018年6月13日朝刊掲載)

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