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社説・コラム

社説 日本のプルトニウム削減 核燃料サイクル撤退を

 日本が原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムがたまり続け、保有量の多さに米国など国際社会が厳しい目を向けている。国の原子力委員会は、再処理は通常の原発で使用する量だけに限定する―などとする新たな削減案をまとめた。

 だが、東京電力福島第1原発事故後、プルトニウムを使うはずだった原発の多くは止まったままだ。実効性に疑問符の付く削減策を掲げたところで、解決できる問題なのだろうか。

 核兵器の原料にもなるプルトニウムである。削減は大きな課題だ。日本は国内外に約47トンのプルトニウムを保有している。長崎原爆に換算して、約6千発分に相当する量だ。

 プルトニウムの製造は、核兵器への転用を防ぐため原則禁止されているが、資源の乏しい日本は、原発で使った核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、原発で再利用することが、日米原子力協定で認められてきた。非核兵器保有国で許されているのは日本だけだ。

 しかしその米国からも、たまり続けるプルトニウムに対して、削減を求める声が上がるようになっていた。使う当てのない余剰プルトニウムは「核テロ」などのリスクを高めるだけでなく、ほかの国が日本を前例にプルトニウム保有に乗り出す、といった核拡散の恐れがあるからだ。

 日米原子力協定は今月、自動延長される見通しだ。それを前にした削減案には、国際社会に強まる批判をかわすため、ともかく削減に取り組む姿勢を示したいという意図が透ける。

 もう一つの柱は電力会社間の連携だ。原発の再稼働が進んでいない東京電力と中部電力が、既に再稼働した原発を持つ四国電力と九州電力に、保有分を譲渡する案も出ているという。だが、電力各社はプルトニウムを融通することには後ろ向きで、こちらも実現性は不透明だ。

 そもそも日本のプルトニウム保有は、再処理で取り出したプルトニウムを高速増殖炉で増やし、無限のエネルギーを得ようという核燃料サイクルの青写真の下で始まった。

 かつてその要とされた高速増殖原型炉もんじゅは、ほとんど稼働しないまま2016年12月に廃炉が決まった。事故やトラブル隠しが続いたのが原因だったとはいえ、サイクルの破綻を象徴していると言えよう。

 しかも青森県六ケ所村に21年度完成予定の再処理工場の運転が始まれば、余剰プルトニウムがさらに増え続けるのは目に見えている。

 そうした状況にもかかわらず国はもんじゅの廃炉を決めた際、今度はフランスの高速実証炉アストリッドの共同開発を、核燃料サイクル継続の柱に据えたのだからあきれる。

 先進国では核燃料サイクルから撤退する流れが強まる。アストリッド計画についてもフランスは大幅に縮小する方針を明らかにしている。日本も一から考え直すべき時ではないか。

 見通しの立たない核燃料サイクルに巨費を投じ、プルトニウムをため続けるのは、国民に対しても、国際社会に対しても無責任だ。小手先の削減策では限界がある。既存のサイクルにしがみつくのをやめ、原子力政策を抜本的に見直す必要がある。

(2018年7月1日朝刊掲載)

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