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[ヒロシマは問う どうみる米朝首脳会談] 韓国の原爆被害者を救援する市民の会会長 市場淳子氏

在朝被爆者 早急に支援を

 南北、米朝の首脳会談に続き、日朝の交渉が早く始まってほしい。2014年の日朝ストックホルム合意では、日本の戦後処理、北朝鮮の拉致の問題を同時に解決していくことが確認されていた。交渉が再開され、戦後処理の中で在朝被爆者の問題が扱われることを期待している。

 現地の朝鮮被爆者協会の08年の発表では約2千人の在朝被爆者の存在が確認され、うち382人が健在とされた。しかし日本政府の被爆者援護策から置き去りになったままだ。政府は国交がないことを理由に挙げるが、高齢化を考えれば早急な対応が求められる。

 朝鮮半島の被爆者への日本の責任を忘れてはならない。植民地支配による生活困窮、強制連行などのために日本に渡り、差別や同化政策を受け、「日本人として」被爆した。なのに、戦争が終われば政府は手のひらを返したように「日本に住んでいない」からと被爆者援護から排除した。

 その後、韓国など海外に住む被爆者が被爆者援護法の適用を求める一連の訴訟に勝ってから、日本政府は国内に住む被爆者と同等に在外被爆者への健康管理手当や医療費の支給を始めた。今では、以前は来日が必要だった被爆者健康手帳取得などの申請が日本の在外公館でできる。しかし日本との国交がない北朝鮮には日本大使館がなく、これらの施策は届いていない。

 朝鮮被爆者協会は国交正常化前でも、医療支援を求めている。薬品不足などが理由。政府には、戦後処理とは別次元の人道的な観点からでも早く取り組んでほしい。また今後、国交が結ばれ手帳を申請しやすくなっても今からの証人探しは容易でない。政府には「70年の空白」の責任を踏まえた柔軟な対応が必要だ。

 在朝被爆者の存在を多くの日本市民が知ることも大切。広島の原爆資料館などで朝鮮半島出身の被爆者について「8月6日」に至るまでの歴史的経緯からしっかりと伝えてほしい。

 在朝被爆者の声を聴き、日本との間に未解決の問題があり、日本に望むことがある限り、支援する側は声を上げ続けなければならない。在韓被爆者の支援活動で得た教訓だが、私はまだ在朝被爆者のために十分な声を上げられていない。今後、在朝被爆者に会って実情を聞く機会を探りたい。(水川恭輔)

いちば・じゅんこ
 1956年、広島県生まれ。79年に初めて韓国を訪れ、在韓被爆者の実態に接して以来、「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」の活動に携わり、99年から会長。

(2018年7月4日朝刊掲載)
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