社説・コラム

社説 米国のイラン制裁 国際協調で回避策探れ

 イラン核合意から5月に離脱したトランプ米政権が、イランへの経済制裁復活に向けた動きを加速させている。日本や中国、欧州各国などに対し、イラン産原油の輸入をゼロにするよう求めた。

 イランと米国の対立が激化すれば、中東情勢は一層不透明感を増す。さらに世界4位の原油産出国であるイランからの供給がおぼつかなくなるようなら、国際エネルギー市場へ与える影響も大きい。原油の高騰につながれば、国内はもとより世界経済の混乱は避けられまい。

 日本は関係国と協調し、米国に制裁発動の見直しを求めるべきだ。

 制裁の猶予期限を11月4日と定め、それ以降にイランと取引する国の企業や個人も制裁対象とする厳しい内容である。米国は「適用除外はない」としている。制裁が発動されれば、日本の金融機関なども米国市場から締め出されかねない。

 米国は核合意からの離脱表明後、新たな合意を目指し、ウラン濃縮の完全停止や弾道ミサイル開発の抑止など12項目の要求をイランに突き付けている。

 イランの最大の資金源を断って、より厳しい核合意の譲歩をロウハニ政権に迫るのが米国の狙いだろう。猶予期限の11月には米連邦議会の中間選挙もある。イラン敵視の傾向が根強い支持層を意識し、強硬姿勢をアピールしたい思惑も透ける。

 自国中心の政策を押し通すために、経済力を背景に原油禁輸を迫る姿勢はあまりにも強権的である。国際社会の不信と反発を招くだけではないか。

 イランが核開発を大幅に制限する代わりに原油禁輸などの経済制裁を解除するのが、3年前の核合意の柱である。制裁解除後は、経済再建に力を注いできた。しかし米国が制裁復活を表明してからは、イラン経済の減速が際立つ。先行きの不透明感から、記録的な通貨下落や物価上昇に見舞われている。

 その上、原油の輸出が難しくなれば、国民生活がさらに困窮するのは明らかだ。核合意を主導した穏健派のロウハニ政権を窮地に追い込みかねない。

 実際、これに反発を強める対米強硬派に押される形で、イランはウラン濃縮能力を拡大する準備作業に着手している。イランが合意から離脱し、核開発を再開するような事態は何としても避けねばならない。

 イランと核合意を結んだ6カ国のうち、米国を除く英国、フランス、中国、ロシア、ドイツは、崩壊の危機にひんした合意の救済に向け、近くイランと外相級会合を開く。歴史的にイランと良好な関係にある日本も各国と連携を強め、制裁回避策を探る努力が欠かせない。同時に、イランが核合意の履行を続けるよう働き掛けたい。

 菅義偉官房長官は「日本企業に悪影響が及ばないよう米国を含む関係国とも協議していきたい」としているが、対応は煮え切らない感があろう。核合意への支持を表明しつつ、一方的に合意を破棄したトランプ氏にも理解を示している。

 朝鮮半島の非核化や日本人拉致問題などで米国との協調が欠かせないだけに、日本の立場が苦しいのは分かる。だが米国の要求は一方的すぎる。安易に追随する姿勢は容認できない。粘り強く米国を説得すべきだ。

(2018年7月4日朝刊掲載)
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