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毒ガス被害健診 受診4年ぶり増 広島17年度 大久野島で従事

 竹原市大久野島にあった旧日本陸軍の毒ガス工場で働き、健康被害を受けた元従業員たち向けの無料の健康診断で、受診者数と受診率が2017年度、4年ぶりに増加へ転じた。国の委託で健診を手掛ける広島県は、被害者の高齢化を踏まえて、身近な医療機関で受診できる態勢に移行したのが理由とみる。

 県内では17年度、37医療機関で7月から7カ月間、健診を受け付けた。県外の在住者を含めた受診者数は453人で、被害者全員に占める割合を示す受診率は24・8%。16年度の424人、21・3%と比べて、それぞれ29人、3・5ポイント増えた。

 県は16年度まで、県内の被害者は原則として集団健診で対応してきた。しかし、被害者の平均年齢はことし3月末現在で89・7歳と、高齢化が進行。体調面などから、あらかじめ場所や時間が決められた集団健診を受けるのが難しい人が増えたという。

 このため、受診者たちの意見を踏まえて17年度、県内の健診を集団から個別へ全面的に切り替えた。受診できる医療機関をこれまでの25カ所から増やし、10月としていた開始時期も3カ月、前倒しした。

 本年度も6月中旬に健診の案内を送り、今月2日に始めた。受診できる県内の医療機関は37カ所で変わらない。県被爆者支援課は「これからも、被害者がより受診しやすい環境整備に努めたい」としている。

 集団健診は1952年、広島大の前身校の一つである県立医科大がボランティアで始めた。74年以降は広島大の医師たちでつくる「大久野島毒ガス傷害研究会」が、国の委託で16年11月まで実施。ピークの88年度には3646人が受けた。(滝尾明日香)

(2018年7月7日朝刊掲載)

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