×

ニュース

上関原発用地 入会権を認めず 山口地裁差し戻し審 住民側が敗訴

 中国電力の上関原発予定地に当たる山口県上関町四代地区の山林をめぐり、原発に反対する住民男性(86)が入会権の確認を求めた訴訟の差し戻し審判決が26日、山口地裁であった。山本善彦裁判長は「入会権を認めるに足りる証拠はない」として請求を棄却した。住民側は控訴する方針。

 判決などによると、争われたのは四代地区の八幡宮が所有し、中電に売却した山林約10万平方メートルの入会権。

 山本裁判長は「薪の採取は住民が神社地を管理保全する上で、黙認されていた行為にすぎない」と述べ、入会権の成立を否定した。

 住民側は入会権確認と、土地の所有権の移転登記の抹消、中電による工事禁止を求めて提訴。一審の山口地裁岩国支部は請求を全て却下。控訴審の広島高裁は2009年6月、入会権の確認だけを同地裁に差し戻していた。

 移転登記の抹消と工事禁止の請求は、最高裁が10年9月に住民、中電双方の上告を受理しないと決定。住民の控訴を退けた広島高裁判決が確定している。

 判決後、山口市内で報告集会を開いた中尾英俊弁護士は「入会権の範囲を狭く捉えた不当な判決」と批判。原告の男性も「裁判所は何のためにあるのか。最後まで闘う」と語気を強めた。

 一方、中電上関原発準備事務所は「当社の主張が認められた妥当な判決」とした。(久保田剛)

入会権
 一定の地域の住民が、特定の山林や原野から、共同して収益を得る慣習上の権利。一般的には燃料の薪を集めたり、家畜用の餌として草を刈ったりする権利を指す場合が多い。民法は物権(物を支配する権利)の一つとして認めている。

(2012年12月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ