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第2次安倍内閣発足 改憲 どこまで現実味 ヒロシマ まなざし複雑

 26日発足した第2次安倍内閣。安倍晋三首相が掲げる、自衛隊を「国防軍」と位置付ける憲法改正や集団的自衛権の行使容認は、どこまで現実味を帯びるのか。新政権の船出に、平和を訴えてきた被爆地広島は複雑なまなざしを向ける。(田中美千子)

 「広島と長崎の体験を踏まえ、日本は平和憲法を手にした。9条は守らないと」。広島県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長(72)は強調する。

 1947年の施行から65年を迎えた日本国憲法。自民党は連合国軍総司令部(GHQ)占領下で制定されたとして自主憲法制定を党是に掲げ、大勝した衆院選の政権公約に国防軍を明記する憲法改正をうたう。政府の憲法解釈で禁じる集団的自衛権の行使も「日本の平和と地域の安定を守るため」と容認する。

 自民党の「右傾化」に対し「冷静に」とくぎを刺すのは、もう一つの県被団協の坪井直理事長(87)。沖縄県・尖閣諸島と島根県・竹島をめぐって深まる中韓両国との対立、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に「多くの人の危機感は分かるし、私もそう。でも人間の命を大事にするとの根本を忘れてはならない」。

 広島市の松井一実市長はこの日の記者会見で、新政権に「憲法を堅持して今の日本があるということを重く受け止めてほしい」と注文。外相で入閣した岸田文雄氏(広島1区)に「広島の思いを受け止めた外交政策を」と期待を寄せた。

 改憲論議が活発化するかどうかは、来夏の参院選が一つの分岐点となる。安倍首相は憲法を改正しやすくするよう発議の要件を定めた憲法96条の改正に前向きだ。自民党が参院選で勝利すれば、論議は一気に進む可能性がある。

 広島修道大の佐渡紀子准教授(国際安全保障)は憲法改正に関する議論を始めることには賛成の立場をとる一方、「改憲しやすくなる状況をつくりたいという姿勢には違和感がある。国民の代表として議論を尽くし、練りに練った改憲案を提示するのが国会議員の責任だ」と指摘する。

(2012年12月27日朝刊掲載)

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