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原爆慰霊 中止や縮小 江田島・三原 豪雨被害響く

 原爆の日を前に、西日本豪雨で被害が大きかった地域を中心に、地元の慰霊式典を中止するなどの動きが相次いでいる。運営を担う住民たちが被災したり、交通網が寸断されたりしていることが背景にある。未曽有の豪雨被害が、原爆死没者の慰霊にも影響している。

 江田島市原爆被害者の会は、市江田島支所の慰霊碑前で28日に予定していた慰霊祭を取りやめる。例年は共催の市子ども会連合会が平和学習を企画し、併せてテント設営など会場準備を担う。しかし、市内で住宅約400棟が被害を受け、子ども会内でも被災した家庭がある中、準備を進められないと判断。被害者の会も高齢の被爆者だけでは準備が難しく、開催を諦めた。

 被害者の会の大原忠会長(77)は「中止は残念だが、仕方がない。会の役員だけで花を手向けるなどの対応を考えたい」とする。

 広島市安芸区でも、7月23日の瀬野川地区原爆死没者追悼式が大幅に縮小される。例年は地元の7小中学校から児童や生徒約100人が参列するが、学区内では多数の死者や行方不明者が出ている。追悼式会場の公園も、撤去した土砂の仮置き場となった。実行委員会の山野井恵子さん(67)は「地域の被害があまりに深刻。今回は児童生徒の参列を見送り、被爆者と実行委員でささやかに営む」とした。

 また、大規模な浸水被害があった三原市も、市と市教委で開く8月4日の追悼式の中止を決めた。同市社会福祉課は「被災者への対応や生活支援で、開催に向けた態勢が整えられない」と説明。地元の被爆者団体が主催する慰霊祭は、例年通り8月6日に開催する。

 呉原爆被爆者友の会は、広島市中区で8月6日にある平和記念式典への団体参加を断念した。例年は約20人でマイクロバスを貸し切って広島入りするが、広島呉道路が復旧せず、国道31号も渋滞が続いているため、式典開始に間に合わない恐れがあると判断した。植田雅軌会長(86)は「そもそも集合場所に来られそうにない会員もいる。みな高齢で、無理はできない」と残念がった。(明知隼二)

(2018年7月20日朝刊掲載)

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