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「核時代から脱却を」 原水禁・協 長崎で世界大会閉幕

 原水禁国民会議などと、日本原水協などによる二つの原水爆禁止世界大会は9日、それぞれ長崎市で締めくくりの集会を開き、全日程を終えた。いずれも、核兵器禁止条約の署名、批准を日本政府に訴える文書を採択した。

 原水禁などの総会は1800人(主催者発表)が参加。沖縄平和運動センターの岸本喬事務局次長は、8日に亡くなった翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事を悼み「遺志を引き継ぎ、名護市辺野古への新基地建設を止める」と宣言した。平和活動に取り組む高校生のアピールなどの後、「一日も早い核時代からの脱却を目指す」とする大会宣言も採択した。

 原水協などの集会は1500人(同)が参加。日本被団協の木戸季市事務局長が、禁止条約の締結を各国に迫る「ヒバクシャ国際署名」が7月末時点で873万人分に達したと発表した。全ての国が核兵器廃絶に力を尽くすよう訴える決議文を採択した。(田中美千子)

「運動広げる時」通底 条約や北朝鮮非核化背景 大会総括

 今夏の二つの原水爆禁止世界大会に通底していたのは、「今こそ運動を広げ、強めなければ」という思いの高まりだ。背景には、昨年7月の核兵器禁止条約の制定と、北朝鮮の非核化に向けた動きがある。

 禁止条約は制定から1年が過ぎ、60カ国が署名、14カ国が批准を済ませた。批准国が50カ国に達すれば発効する。が、日本政府はそっぽを向いたままだ。ついに動きだした米朝間の非核化交渉でも、日本外交の存在感は希薄さが否めない。

 日本原水協の大会と原水禁国民会議の大会は、いずれも「被爆者の思いを実現する格好の条件が整ってきた」などと捉え、運動の強化策を討議した。核問題を専門にしない平和団体や環境団体、さらに国際社会と連携を深める必要性も指摘された。

 さらに、互いに距離を置いてきた原水協と原水禁の協調を模索するかのような場面もあった。4日、原水協の世界大会・広島の開会総会で登壇したのは、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の福山真劫(しんごう)共同代表。原水禁の前事務局長で、今は関連団体「平和フォーラム」のトップを務める。

 元々、大衆運動として始まった原水爆禁止運動は、路線対立から分裂。原水協と原水禁は別々に大会を開いてきた。以来、原水協の大会で原水禁関係者が発言したのは初めて。福山氏が核軍縮、脱原発、改憲阻止などの課題を列挙し、「分裂していては安倍政権に勝てない」と連携を呼び掛けると、会場が沸いた。

 ただ1950年代から続く路線の対立は根深い。今後の連携の在り方を原水協、原水禁の双方の幹部に尋ねても「これから考える」「相手の出方次第」と先が見通せない。運動をけん引してきた被爆者が高齢化する中、若者も巻き込みながら、原点の大衆運動にどう近づくか。担い手の本気度が試される。(田中美千子)

(2018年8月10日朝刊掲載)

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