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社説・コラム

社説 日中平和友好条約40年 「政温経温」目指したい

 日本と中国が平和友好条約に調印して、きょうで40年になる。恒久的な関係発展をうたいながら、その通りにはなっていないのが現実である。

 日中関係を表す言葉として、「政冷経熱」が叫ばれ始めたのは1990年代のことだ。政治は冷めていても、経済の結び付きは熱気を帯びていた。両国民は今、互いに良いイメージを持っているとは必ずしも言い難い。中国の反日教育に対し、わが国では「嫌中」の声まで聞こえる。しこりの一つが沖縄県・尖閣諸島を巡る問題だろう。

 6年前に日本政府が国有化に踏み切ると、中国は態度を硬化させ、領海侵入を今も繰り返している。日本側が領土の根拠とする史料に疑義があるのなら、対話のテーブルに着いて解決を図るのが筋だろう。

 両国の海岸線からちょうど等距離にある海域のガス田共同開発でも、中国の独断専行ぶりが目立つ。強引で力ずくの海洋進出は、南シナ海でも周辺国とのトラブルの種になっている。

 「覇権主義」に否定的だったのは、まさに40年前の中国ではなかったか。

 日中平和友好条約には中国側の求めで、覇権を求めない趣旨の反覇権条項を盛った。当時の鄧小平副首相が述べている。

 中国が覇権を求めるなら世界人民は中国人民とともに反対しなければならない。反覇権条項は中国自身への拘束だ―と。

 習近平国家主席も、条約を読み返してもらいたい。

 ただ、かつてとは日中の立場は大きく変わっている。中国は8年前、国内総生産(GDP)で日本を抜き、米国に次ぐ世界2位の経済大国となった。

 その成長曲線が上向き始めたのも40年前のことである。当時の中国は、文化大革命で疲弊した経済の立て直し策として「改革・開放」路線を選ぶ。日本も円借款などで後押ししてきた。仏教伝来や遣隋使、遣唐使を含め、両国が古くから支え合ってきた歴史にあらためて目を向けるべきだろう。

 ここにきて関係修復の芽も出てきている。安倍晋三首相は「競争から協調へと、関係を大きく発展させる」とし、ことし5月、来日した李克強首相の前でも強調した。

 中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」への支持表明も、その一環だろう。米国への配慮などから慎重だった安倍首相だが、経済界からの強い要請で方針を転換した。

 経済的な結び付きだけでは心もとない。実際、10年前の共同声明で掲げた「戦略的互恵関係」もかなわなかった。両国に求められるのはトップ同士が腹を割っての信頼醸成だろう。

 その点では安倍首相が年内に訪中し、習国家主席も来年訪日する方向で調整が進んでいる。良い兆しの半面、米国と中国は報復関税を仕掛け合っており、「貿易戦争」が叫ばれる難しい状況も重なる。日中がいま目指すべきは「政温経温」という、現実的な到達点だろう。

 そのためにも中国には大国らしい振る舞いが求められる。国際社会の緊張をあおる軍備拡張を慎み、民主主義を求める国民の拘束も解くべきだ。無論、安倍首相も歴史認識をしかと持ってもらわねば困る。条約の原点に立ち返り、隣国として共存の道を探り合いたい。

(2018年8月12日朝刊掲載)

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