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先読めぬ 地上イージス 国、26日から萩などで3度目説明会

電磁波の影響 住民懸念 米の「言い値」 総額膨張も

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画について、防衛省は26~29日、候補地の陸上自衛隊むつみ演習場のある萩市と山口県阿武町で3度目の住民説明会を開く。配備を急ぐ国に対し地元の反発はさらに高まっている。そもそもイージス・アショアとは何なのか。これまでの国の説明などをたどり、計画の中身や問題点を整理した。(和多正憲)

■装備の概要

 イージスとはギリシャ神話に登場する「万能の盾」。アショアは英語で陸地を意味する。海上自衛隊のイージス艦に搭載されたミサイル迎撃システムの地上版といえる。日本へ発射された弾道ミサイルをレーダーで捕捉し、大気圏外の宇宙空間で撃ち落とす。

 米国で開発され、米軍が2016年にルーマニアで運用を始めた。ポーランドでも20年から運用される。米ハワイ州のカウアイ島には実験施設がある。日米共同開発の新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を搭載する予定で、発射試験は米国内で実施する。

 防衛省は搭載レーダーに米ロッキード・マーチン社製の「SSR」の採用を決定。レーダーを含む1基当たりの取得経費は約1340億円としており、当初の約800億円から大幅に増えた。装備品の一部は、米政府の提示額などを日本側が受け入れる対外有償軍事援助(FMS)契約となる見通し。米国の見積額に基づく前払いで「言い値」になりかねず、総額はさらに膨らむ懸念も出ている。

■導入経緯

 北朝鮮の核・ミサイル開発などを理由に政府が昨年12月に導入を閣議決定。山口県と秋田県の国内2基の配備で日本全土をカバーできるとする。防衛省が米国ミサイル防衛庁の協力を得て候補地を絞り込んだ結果、今年6月に陸自むつみ演習場と陸自新屋演習場(秋田市)を「最適」と公表した。当初は萩市の離島・見島の航空自衛隊分屯基地なども検討したが、敷地が狭くて条件を満たさなかったとしている。

■効果と課題

 現在の日本の弾道ミサイル防衛(BMD)は、海自のイージス艦の迎撃ミサイルが大気圏外で迎撃し、撃ち損じた場合、空自の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が地上から大気圏内で狙う二段構え。これに陸自のイージス・アショアを加え、万全の迎撃態勢としたい考えだ。イージス・アショアは陸地に固定されるため、イージス艦のように移動できないデメリットはあるが、常時警戒が容易となり隊員の負担軽減につながるという。

 一方、候補地の近隣住民からはレーダーが発する強力な電磁波の人体や環境への影響を懸念する声が根強い。防衛省は本年度中に電磁波などの影響をみる電波環境調査を実施。現地で地質・測量調査に入るため、9月12日に入札の開札も予定する。同省は調査結果を踏まえ「不適との結論になれば配備しないこともあり得る」としている。

(2018年8月20日朝刊掲載)

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