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朗読劇で描く「あの日」 韓国・朝鮮人被爆者の苦難に光 武蔵大生 資料館で披露

 武蔵大(東京)でメディア社会学を専攻する大学3年生18人が、韓国・朝鮮人被爆者の苦難をテーマにした朗読劇を完成させた。26日午後2時半から、広島市中区の原爆資料館東館地下1階の会議室で披露する。学生たちは「原爆で苦しい思いをしたのは日本人だけではなかったことを伝える」と意気込む。(石川昌義)

 タイトルは「わたしたち朝鮮人がヒロシマで体験したこと」。5人の子どもを原爆で失った女性、医師も看護師もいない倉庫に収容され、塗り薬を与えられただけで放置された男性…。「あの日」の出来事から劇は始まる。植民地支配下の古里から日本に渡った戦前と戦中、そして貧困と差別にあえいだ戦後の暮らしを広島弁で語る。

 画家四国五郎や詩人峠三吉など、被爆直後の広島で活動した文化人について著作がある元NHKプロデューサーの永田浩三教授(63)のゼミ生が5月以降、朝鮮半島出身の被爆者の体験記や戦後の被爆者運動に関する本を読み込み、脚本を練った。大谷ひかりさん(21)は「被爆地の先人が、苦難の事実を掘り起こして伝えてきた歴史を実感した」と振り返る。

 1960年代に在韓被爆者を取材した元中国新聞記者で元広島市長の平岡敬さん(90)の報道に加え、援護を受けられない海外在住の被爆者が司法を通じて現状を打開した訴訟の要素も盛り込んだ。

 永田教授は「あの日、どれだけの朝鮮人が広島で被爆して何人が亡くなったかも、はっきりしていない。原爆を知ることは、それほど大変なことだと学生に学んでほしい」と期待する。

 朗読劇を披露した後、在日韓国人2世の李鐘根(イ・ジョングン)さん(89)=安佐南区=から被爆体験を聞く。入場無料。

(2018年8月25日朝刊掲載)

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