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社説・コラム

韓国大統領特別補佐官 文正仁氏に聞く 北朝鮮の非核化 目標揺るがない

日本の積極的外交 期待

 文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領のブレーンで、広島県が主催した「ひろしまラウンドテーブル」に参加のため広島を訪れた文正仁(ムン・ジョンイン)・大統領統一外交安保特別補佐官が、中国新聞のインタビューに応じた。歴史的な米朝首脳会談から2カ月余り。北朝鮮の非核化で、まだ具体的な進展が見られていないことについて「目標は揺るがない。粘り強さが必要だ」と述べた。(桑島美帆)

  ―非核化の現状をどう見ますか。
 米朝合意は非核化の工程が明記されておらず、具体性に欠けるのは事実だ。しかし両国が朝鮮半島の平和を求め、完全な非核化の促進に合意したことに意味がある。現在は外交官が実務レベルで進める段階だ。北朝鮮は豊渓里(プンゲリ)の地下核実験場や、東倉里(トンチャンリ)のミサイルエンジン実験場の解体に着手したが、保有する核物質や核兵器の廃棄に至っていない。周辺国との認識のギャップはここにある。

  ―4月の南北首脳会談の「板門店宣言」では年内に朝鮮戦争の終戦宣言をし、平和協定に転換するとしました。
 文大統領は年内の実現を目指している。まず朝鮮半島で信頼関係を育み、非核化に向かうためだ。離散家族の再会や、非武装地帯の警戒哨所の段階的な撤去はその一環だ。だが米国は核問題の一括妥結を目指し、非核化を優先すべきだとしている。来週、ポンペオ米国務長官が北朝鮮を訪問する。どんな交渉をするかを待ちたい。北朝鮮の建国記念日の9月9日から国連総会が始まる18日までの間に、平壌では南北首脳会談が開かれるだろう。板門店宣言と米朝首脳会談で生まれた機運を維持したい。

  ―日本の北朝鮮政策をどう見ますか。
 日本にとって拉致問題が最優先の問題であることは理解できる。ただ日朝間には不信感ばかりが募っている。日本政府は米国の陰に隠れているが、北朝鮮の非核化でもっと積極的な外交を展開してほしい。

  ―被爆地広島に来て何を感じますか。
 残念ながら、韓国では核兵器の被害が知られていない。私はこれまで、学生たちに広島に行くべきだ、と呼び掛けてきた。私自身も核抑止を支持していたが、学生だった1976年に初めて広島を訪れ、原爆資料館で多くの子どもたちの犠牲を知って、断固として核兵器に反対するようになった。今でも、その気持ちは変わらない。韓国も日本と同様、米国の核の傘にあるために核兵器禁止条約に参加していないが、個人的には条約を支持する。核兵器のない世界は子どもたちを含め、全ての人にとって、最善の環境だからだ。

ムン・ジョンイン
 51年韓国済州島生まれ。94年延世大政治外交学科教授、16年特任名誉教授。00年と07年の南北首脳会談で特別随行員。17年の文在寅政権発足で統一外交安保特別補佐官に就任。

(2018年8月25日朝刊掲載)

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