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社説・コラム

『この人』 ヒロシマの継承をGISで図る 竹崎嘉彦さん

原爆被害 地図で視覚化

 広島「原爆の日」の前日に催すはずが酷暑のために延期となった。参加する小中高生らが、原爆痕跡地図を地理情報システム(GIS)を利用してコンピューター上に作製するセミナーである。9月16日、平和記念公園(広島市中区)の原爆資料館東館前を集合場所に開く。

 参加者は、市内フィールドワークから各慰霊碑や被爆建物・樹木、モニュメントを確かめる。「つかんだ情報を、GISでも簡単なソフトを使い、デジタル地図に落とし込んでいきます」と当日の作業を紹介した。自らが作製したヒロシマ被爆地図も提供する。

 広島壊滅5日後の1945年8月11日、米軍が撮っていた精細な航空写真を基に、国土地理院の数値地図の座標と重ね合わせ、被害状況を現在の町・丁ごとに見て取れる。米国立公文書館所蔵の写真類は、広島大原爆放射線医科学研究所に在籍していた2002年に入手し、壊滅直前もデジタル地図で再現した。

 「被爆した両親を持つ地図屋の3代目として人々の息遣いも伝えたかった」と振り返る。現中区本通の生家は全国でも珍しい地図専門書店だった。幼い頃から地図を読む楽しさに触れた。だが、「紙だけでは生き残れない」と90年代に広島大大学院で学び直す。爆心地の座標のずれをGISで突き止め、次世代への継承を図るセミナーを発案し06年から仲間と続ける。

 しかし、体調がここ数年思わしくなく各大学での講義は退く。とはいえ、研究への情熱は衰えてはいない。「視覚化する地図作りを通してヒロシマを身近にしてほしい」。参加問い合わせは主催の地理情報システム学会中国支部ホームページから。(西本雅実)

(2018年8月26日朝刊掲載)

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