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折り鶴 米から平和公園へ ニューメキシコ州のオーレッドさん

仲間と団体発足 ネットで募り100万羽目標

 かつての原爆開発拠点に近い米国ニューメキシコ州サンタフェ市に住む写真講師リック・オーレッドさん(53)が、全米各地から集まる折り鶴をヒロシマに届ける活動を、昨年から続けている。目標は100万羽。この1年で寄せられた3万5055羽を今月、平和記念公園(広島市中区)の原爆の子の像にささげた。(金崎由美)

 活動仲間の元小学校教諭レスリー・オトゥールさん(67)と、ボストンバッグやビニール袋に詰めた折り鶴を原爆の子の像に持参。原爆資料館の浜岡克宣副館長や飛び入り参加の観光客の手を借り、折り鶴を飾るブースを満たした。

 昨年も1万2千羽を持ち込んだ。「1羽ずつに心がこもっている。どんな会話をしながら折ったのか、想像するだけで感慨深い」とオーレッドさん。浜岡副館長は「海外から個人でこれだけの数を持ち込むケースはなかなかない。皆さんの思いを地道に届け続けてほしい」と話していた。

 折り鶴を集め始めたのはトランプ米大統領が就任した昨年1月。作家エレノア・コアさんが著した「サダコと千羽鶴」を読んだのがきっかけだ。ヒロシマでは原爆投下への怒りや被害の痛みを、平和教育や対話に振り向けていることを知って感銘を受けたという。

 米社会の対立と分断が深刻になり、トランプ氏自身も核使用を肯定する発言をしていた。その中で「平和への対話という前向きな行動が折り鶴なら可能」と考えて「イン・ザ・フォールズ・オブ・ピース」という団体を発足させた。折り鶴を通して平和の人の輪を広げる、という意味だ。

 賛同した仲間5人で、インターネット上で折り鶴を募っている。国際団体「オリヅルUSA」にも呼び掛けると今年は米国の20州に加え、イタリアやニュージーランドからも届いた。寄せられた計600ドルの浄財は広島平和文化センターに託した。

 サンタフェ市は戦後も核兵器開発を担ったロスアラモス市に近く、毎朝通勤する市民も多い。オーレッドさんは「私たちの活動を理解してくれる人もたくさんいる。草の根で活動を続けたい」と話している。

(2018年8月27日朝刊掲載)

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