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被爆米兵捕虜 アニメ映画に 広島で製作会見 漫画家かわぐちさん参加

 広島で被爆死した米兵捕虜の史実を基にし、アニメーション映画「ヒロシマ・夏の名残のバラ」が、2020年秋の完成を目指して製作される。米国出身のアニメーション作家ジミー・ムラカミさん(14年に死去)が生前に企画。遺志を継いだプロデューサー宇田川東樹さん(70)=東京=たちが27日、広島市役所で会見し、意気込みを語った。

 捕虜となった米爆撃機の乗組員が、1945年8月6日の米国による原爆投下で亡くなった史実をヒントにしたフィクション。原爆投下前、捕虜の米兵と、捕虜の看護に当たった女学生が、敵味方を超えて心を通わせる物語で、国家間の戦争に翻弄(ほんろう)される人間の姿を描く。タイトルは、2人をつなぐきっかけとなった唱歌「夏の名残のバラ」から付けた。

 核兵器の恐怖を描いたアニメーション映画「風が吹くとき」(86年)などで知られるムラカミさんが10年に製作を開始。被爆米兵の調査を続けてきた被爆者の森重昭さん(81)=広島市西区=の協力も得て、シナリオ作りなどを進めていた。

 日系人だったムラカミさんは戦時中、強制収容所に入れられ、姉を亡くした。宇田川さんは「人間を無視する国家の非人道性と、その中での人のつながりを描きたい」。森さんは「被爆米兵がいたことはあまり知られていない」と、映像化に期待を寄せた。

 脚本は「うなぎ」(今村昌平監督)などで知られる冨川元文さん(69)、キャラクターデザインは「沈黙の艦隊」の漫画家かわぐちかいじさん(70)が担う。冨川さんは「(ムラカミさんの)原爆への怒りとグローバルな視点を生かしたい」と話した。(明知隼二)

(2018年8月28日朝刊掲載)

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