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社説・コラム

キーパーソンがゆく 幟町小「のぼり平和資料室」ボランティア(広島市中区) 岡部喜久雄さん

街の被害 資料集め解説

原爆の記憶を次世代へ

 幟町小(広島市中区)が5月に開設した「のぼり平和資料室」で、原爆被害に関する資料の収集や、訪問者への解説をボランティアで担う。学区内の上幟町北町内会長でもある。「原爆が地域に何をもたらしたかを、次世代に伝える手伝いをしたい」と力を込める。

 資料室では、被爆10年後に白血病のため12歳で亡くなった佐々木禎子さんの折り鶴や、戦後の青空教室の様子を収めた写真など約100点を展示する。毎週金曜の午前中に限った開室だが、これまでに修学旅行生や地域住民たち延べ200人以上が訪れた。昨春に学校から依頼を受けて準備に加わり、運営にも携わる。

 子どもの頃から、母や祖母の被爆体験に積極的に耳を傾けてきた。それでも原爆に関する報道に触れるうち、自分が暮らす街の被害を「思っていたほど知らない」と気付いた。

 10年ほど前から改めて、図書館で被爆手記を読みあさり、幟町周辺の被害に触れた記録や資料を集めた。戦前の戸別地図と照らし、関係者が健在と知れば直接訪ねた。「せめて自分が住む地域だけでも、死者や遺族の記録、記憶を継いであげたい」との思いだった。

 子どもたちが継承の担い手に育ってくれればと願う。「自ら学んだ内容は心の深い部分に残る」と、10月に同小が開く平和を学ぶフィールドワークの講師も快諾した。「世界に広がった禎子さんの物語に加え、自分たちが暮らす地域に起きたことを知り、伝えてほしい」(明知隼二)

おかべ・きくお

 1948年、広島市生まれ。幟町小、幟町中、県立広島商業高を経て日本大芸術学部に進学。東京で店舗設計の仕事を経て、家業の美容用品卸業を継いだ。2006年から上幟町北町内会長を務め、地域の原爆被害に関する調査や資料収集に注力する。

(2018年9月1日朝刊掲載)

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