×

連載・特集

地上イージス 二つの候補地 <2> 山口・むつみ演習場

政権との近さ 「国防に協力」巧妙折衝

 8月21日の夕刻。山口県が計75ページに及ぶ文書を公表した。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画に関する国からの2度目の回答文書。「不適との結論になれば見直す」「県内や周辺の国有地も検討する」。結論ありきではないとの国の姿勢が強調された内容となっていた。

 「一定の説明はされたと感じている。追加照会も考える」。村岡嗣政知事は翌日の定例会見で受け止めを述べた。だが配備そのものの是非は言及しなかった。

想定問答を準備

 質問と回答を繰り返しながら徐々に地元理解につなげる。防衛政策を巡り、県は過去にも似た手続きを踏んでいる。3月に完了した米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地(岩国市)への米空母艦載機の移転受け入れだ。県と地元は騒音や事故の影響をただす国とのやりとりを経て昨年6月、「容認」を表明した。

 県は防衛政策が国の専管事項とした上で「尊重し協力する一方、県民の安全を確保する立場から言うべきは言う」との基本姿勢を掲げる。「言うべきは言う」。その折衝ではしたたかで官僚的な作法も浮かぶ。

 国がイージス・アショアの配備候補地を初めて公表した6月1日。県庁での防衛政務官との面会時、同席した地元首長や議長には事前に質疑応答の想定問答がびっしりと書かれた資料が配られた。昨年5月、艦載機受け入れに絡む防衛政務官らとの会談時にも同様に「台本」は準備された。

 ただ交渉事ではシナリオ通りと思われない場面も。6月22日の小野寺五典防衛相と知事や地元首長との会談。候補地に隣接する阿武町の花田憲彦町長が終了間際に突然、発言を求めた。前日に現地調査の入札を公告するなど矢継ぎ早に進める国への不信感をあらわにし、開札延期を訴えた。

「ガス抜きにも」

 後日、調査に理解を示していた萩市の藤道健二市長も一転、延期を要請。これを受け国は12日まで開札を延ばし、地元に配慮する姿勢を見せた。だが配備に反対の地元議員からは「国は当初から地元の反発を織り込み済みで、延期は既定路線では。ガス抜きにもなる」との見方も出ている。

 「最後は議会と首長が判断すればいい」。住民の反発が強まる中でも自民党山口県連関係者は自信を見せる。県内は安倍晋三首相をはじめ衆参全議席を自民党が独占。同じく自民1強の県や市町議会の多くも政権との協調路線は揺るがない。「国防への協力」の名の下、イージス計画は次の手続きへ進もうとしている。(和多正憲)

米空母艦載機移転計画
 在日米軍再編の一環で日米両政府が2006年5月に合意。米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地(岩国市)へ空母艦載機約60機を移す計画で、山口県と岩国市などが17年6月に移転受け入れを表明した。18年3月の移転完了を受け、同基地の所属機は約120機に倍増し、極東最大級の航空基地となった。

中国新聞・河北新報合同連載

(2018年9月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ