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己斐尋常高等小 満州事変当時寄贈の慰問作品  歴史研究家佐伯さん 15日地元で紹介

児童の絵や書 戦争色濃く

 広島市西区己斐西町の歴史研究家佐伯晴将さん(75)が、地域の戦争史を伝える活動に取り組んでいる。使うのは、1931年の満州事変当時、己斐尋常高等小学校(現己斐小)の児童が戦地に贈った慰問作品だ。戦争が子どもに与えた影響を映し出す貴重な史料で、15日に己斐公民館である講座で紹介する。(栾暁雨)

 「ヒノマル」「尽忠報国」と力強い筆致の書道作品、己斐駅を通過する軍用列車を市民が見送る絵など48点。作文には「お国の為に尽くしたい」「満州事変をまねて戦争ごっこをしています」などと記されている。

 表紙には厳島神社の大鳥居の絵とともに「広島市小学校児童 慰問作品」とある。市郷土資料館は「兵士を鼓舞するために市内の学校から集められた作品群の一部と考えられる」と話す。

 作品は旧満州(中国東北部)に派兵された陸軍第二師団(仙台市)などに送られ、帰還兵が持ち帰ったとみられる。東京の古書店店主が東北地方で見つけ、2013年に原爆資料館に寄贈した。

 作品の存在を知った佐伯さんが15年に同館から複写を入手。地域の歴史と照らし合わせて研究を進め、今夏から講座を開く。「『名誉ある戦死』などと書かれた詩もあり、子どもが軍国主義の影響を強く受けていたことが分かる。身近な地域史の一幕として次代に伝えたい」と話す。

 作品の複写を冊子にまとめ、15日の講座で資料として配布。作品解説や己斐地区と満州事変の関わりも載せた。資料代700円。己斐公民館☎082(273)1765。

(2018年9月12日朝刊掲載)

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