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かき船移転 訴え退ける 広島地裁「占用許可は妥当」

 広島市中区の元安川にある船上飲食店、かき船「かなわ」の原爆ドーム近くへの移転を巡り、周辺住民や被爆者たち19人が、移転を認めた国の河川占用許可は世界遺産条約に違反するなどとして国に許可の取り消しを求めた訴訟の判決が19日、広島地裁であり、小西洋裁判長は原告の訴えを退けた。

 河川法に基づく河川占用許可の違法性を問う原告の適格性が争点になる中、小西裁判長は、災害時にかき船の影響で浸水被害などを受けかねない周辺住民6人だけを「適格」と認定。その上で「(かき船の)係留力は十分に確保されている」などとして占用許可は妥当との判断を示した。

 周辺に住んでいない被爆者たち残る原告13人については「河川法は世界遺産の歴史的・文化的価値を享受する利益を保護する趣旨を含んでいない」などとして原告適格を認めなかった。

 かなわは1963年から現在地の南約400メートルの元安川にかき船を設置して料亭を経営。治水上の問題で中国地方整備局から移転を求められ、市が認めた上で2014年12月に国の占用許可を得て原爆ドームの南約200メートルの現在地に移った。原告は15年6月に提訴。17年3月には10年間の継続利用が許可された。

 原告は判決後に広島市中区で報告会を開催。金子哲夫原告団長は「原爆ドームの世界遺産としての価値に関わる検討がされておらず、容認できない」と近く控訴する考えを示した。国は「裁判所に主張が理解されたと考えている」としている。(松本輝)

(2018年9月20日朝刊掲載)

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