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地上イージス反対表明 山口県阿武町長「安全安心損なう」

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画について、候補地に隣接する山口県阿武町の花田憲彦町長は20日の町議会定例会で「町民の安全安心を著しく損なう。反対を明確に表明する」と述べた。地元の自治体トップが公式の場で反対を表明するのは初めて。町議会も同日、計画撤回を求める請願書を全会一致で採択した。

 町は候補地の陸上自衛隊むつみ演習場(萩市)への進入路が一部通っており、防衛省が萩市とともに地元説明を続ける。同省は地元の理解を得て進める方針を示しており、配備計画への影響が注目される。

 花田町長は、むつみ演習場への迎撃ミサイル配備は「町が進めてきた自然や人を大事にしたまちづくりに逆行する」と指摘。「町民の切実な思い、悲痛な叫びを受け止めることこそ私の選択すべき道だ」と反対の理由を説明した。

 定例会後、花田町長は記者会見を開き、もう一つの候補地の秋田県でも反発が強まる点を踏まえ「エールを送る」と発言。国の現地調査を容認した理由については電磁波の影響などを調べる点を挙げ「賛否とは別に必要なものではないか」との見解を示した。

 一方、萩市の藤道健二市長はこの日の記者会見で配備計画の是非を「現時点で判断しない」と強調。来年3月完了の現地調査の結果を踏まえ「国益にかない市民の安心安全が確保できるかを見極める」と述べた。

 阿武町の反対表明を受け村岡嗣政知事は記者団の取材に「国へ伝えたい。不安や懸念が拭えるよう丁寧な説明を求めたい」と話した。菅義偉官房長官も同日の記者会見で「弾道ミサイルの脅威から防護するために必要な装備品。地元の理解が大前提で懸念や要望に丁寧に対応することが大事だ」と述べた。

 防衛省は配備先決定に向け、近く候補地のむつみ演習場と陸自新屋演習場(秋田市)での現地調査に入る。本年度中に調査を終え「仮に不適の結論なら候補地を見直す」としている。(和多正憲)

(2018年9月21日朝刊掲載)

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