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社説・コラム

天風録 『沖縄の魂』

 万歳三唱で突き上げた両腕が、今度は拍子を取って左に右に。南の島では選挙に郷土芸能カチャーシーは付き物らしい。次の沖縄県知事に決まった前衆院議員の玉城デニーさんが気持ちよさそうに舞っていた▲他の陣営は目に見えぬ相手とも戦っていたに違いない。基地問題で政府から袖にされ続け、道半ばで倒れた翁長雄志(おなが・たけし)前知事である。「イデオロギーよりアイデンティティー」「誇りある豊かさを」。遺訓は、今回も有権者の魂を揺さぶっていたはず▲選挙結果も、3年前の県民大会でのあいさつ通りだったといえる。先日の小欄でも引いた。「うちなーんちゅ、うしぇーてー、ないびらんどー(沖縄の人を、ないがしろにしては、なりませんよー)」▲ただ、その民意も決して一枚岩ではない。地元紙などの出口調査では、玉城さんに軍配がはっきり上がった中高年層に比べ、20代、30代では与党系候補が肩を並べる傾向だったそうだ。同日選の宜野湾市長選でも、政権が後ろ盾の候補が制している▲カチャーシーは、こぶしを軽く握って舞う姿をよく見掛ける。幸せや魂がこぼれ落ちぬように願っての験担ぎだと聞く。間違っても外から握りつぶしてはなるまい。

(2018年10月2日朝刊掲載)

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