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社説・コラム

社説 沖縄新知事に玉城氏 政権は民意に寄り添え

 沖縄県知事選で、前衆院議員の玉城デニー氏が初当選した。急逝した翁長雄志(おなが・たけし)知事の後継を名乗り、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡って「新基地を造らせない」と強く訴えた。安倍政権が支援する前宜野湾市長の佐喜真淳(あつし)氏を大差で下した。

 4年前に続き、移設反対の民意が示されたことになる。普天間の閉鎖・返還にめどを付けないまま、移設をごり押しする政権への強い反発があるのは間違いあるまい。

 安倍晋三首相にはショックだったのではないか。選挙結果を「真摯(しんし)に受け止める」と述べた。ならば、移設が本当に「唯一の解決策」なのか、立ち止まって再検討すべきである。

 翁長氏の死去に伴う急転直下の知事選だった。移設を推進する安倍政権は、佐喜真氏の擁立を早々と決めた。一方で、翁長氏を支えた勢力の「オール沖縄」の候補者選びは進まず、自由党の衆院議員だった玉城氏が立候補を正式表明したのは告示2週間前になった。

 元タレントの玉城氏は一定の知名度があるとはいえ、出遅れた感が否めない。事実上一騎打ちの佐喜真氏には、自民党の有力議員が続々と応援に駆け付け、てこ入れを図っていた。それでも玉城氏が大勝したという事実は重い。

 共同通信社の出口調査によると、投票で最も重視した政策は、普天間飛行場の返還・移設問題が最多の51・5%だった。佐喜真氏は移設への賛否を明らかにせず、経済振興策を中心に訴えたが、逆効果だったのではないか。結果的に、基地問題の議論がかみ合わなかったのは残念だった。

 玉城氏の知事就任で、まず注目されるのは政権側のスタンスだろう。同じく辺野古移設に反対の立場で当選した翁長氏は、安倍首相に面会を申し入れても会えない日が続き、面会できたのは選挙の4カ月後だった。

 玉城氏は知事選から一夜明けたきのう、政権との関係について「はなから対立や分断の立場を取るつもりはない。忌憚(きたん)なく意見交換したい」と早期の面会に意欲を示した。安倍首相は、翁長氏の時のような態度を取ってはならない。

 知事選と同日に投開票された宜野湾市長選では、佐喜真氏の後継で、政権が支援する新人が当選した。これで県内11市長のうち9市長が政権寄りになり、県政とのねじれは明らかだ。知事選の出口調査でも、年代別で30代は佐喜真氏の支持が上回った。外交が絡む基地問題よりも、身近な経済振興を求める有権者の姿も見える。

 今こそ普天間飛行場の運用停止を辺野古移設と切り離し、進める道を模索したい。日米両政府の1996年の返還合意は、辺野古移設が前提ではなかった。米朝関係の改善など東アジア情勢の変化を踏まえ、再検証の余地があるのではないか。

 米軍基地を巡っては、沖縄だけではなく日本全体の問題として捉える機運が少しずつ生まれている。全国知事会は7月、日米地位協定の抜本的な見直しや基地の縮小・返還を求める提言書を全会一致で決議した。本土の私たちが傍観者にならず、沖縄とともに声を上げる姿勢が、政府のかたくなな態度を変える潮流になるはずだ。

(2018年10月2日朝刊掲載)

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