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平和行事

『美術散歩』 反戦・平和 「手で思考」

◎四國五郎・ガタロの師弟仕事展 16日まで。広島市西区横川町3の11の12、アートギャラリー横川創苑

 会場に、何百回めくったのやら、ぼろぼろになった画集「広島百橋」が置いてある。2014年に89歳で亡くなった画家四国五郎さんの著作(1975年刊)で、持ち主は、広島市で清掃員の傍ら絵を描くガタロさん(68)。ガタロさんの油彩「相生橋」は、この画集に促されて描いた古い絵という。

 母子像などを通じ反戦、平和を訴えたことで知られる四国さんの秀作群と、ガタロさんの新旧の作品が、それぞれ10点余り並んでいる。

 「師弟」展と銘打つが、ガタロさんは四国さんに絵画の指導を受けたわけではない。ヒロシマに根差した作品を、「手で思考する」ように無数に描き続けた四国さんの生きる姿勢を敬い、「かばん持ち」をしたと語る。

 ガタロさんの絵は、気性の激しい一面を映してか、反戦を直接表現した作品は幾分、おどろおどろしい。橋や川を描いた作品には、そうした気性を水底に閉じ込めたような、穏やかさと深みがある。雑巾など身近な清掃用具を描いた近作は、両方が混じり合ったような独特の味わい。

 四国さんという「師」への学びは、「相生橋」以降もずっと続いていることが伝わってくる。(道面雅量)

(2018年10月11日朝刊掲載)

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