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「重松日記」再販へ 「黒い雨」の資料となった被爆記 17年ぶり 井伏生誕120年記念

 福山市出身の作家井伏鱒二の代表作「黒い雨」の資料になった「重松日記」(筑摩書房)が、17年ぶりに再販になる。生誕120年を記念し11月7日に発売する。井伏の友人、故重松静馬氏=広島県神石高原町=の被爆記で、被爆直後の広島の惨状を伝える。

 重松氏は爆心地の北約2キロの横川駅で被爆した。日記には8月6日から数日間の広島を記録。幾つもの死体が橋脚に頭を打ちつけながら川面を流れる様子や、一糸まとわぬ黒焦げの死体などを克明に記している。

 子や孫のために書いた重松氏だが、1962年、井伏に日記を送り小説化を依頼。井伏は被爆者にも取材し黒い雨を執筆した。重松日記には、井伏が重松氏に宛てた書簡も収める。

 重松日記は2人の死後、2001年に出版。重松さんの養女の夫文宏さん(82)によると、今も問い合わせがあるが、在庫がなくなったため同社に再版を依頼した。文宏さんは「井伏は原爆を文学として残し、重松は体験者として事実を書き残した。2作を比べながら読み続けてほしい」と話す。

 再版は千部、2808円。啓文社や井伏と重松氏の交流を伝える資料館「歴史と文学の館 志麻利」(同町)で販売する。志麻利☎0847(85)2808、筑摩書房営業部☎03(5687)2680。(高本友子)

(2018年10月30日朝刊掲載)

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