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核なき世界実現「45年に」 広島県 国連に新目標働き掛けへ

首長会議は「20年」 期限にずれ 整理課題

 広島県が国連に対して、被爆から100年を迎える2045年に「核兵器のない世界を実現する」との目標を掲げるよう、働き掛けを本格化させると決めたことが1日、分かった。国連の設立からも100年の節目で、国際社会が協力する新たな目標としてふさわしいと判断したとみられる。平和首長会議(会長・松井一実広島市長)は20年までの核兵器廃絶を目指して活動しており、県も賛同する。二つの目標の意義づけや事業の進め方について、市民の理解を得るための整理が求められる。(教蓮孝匡)

 国連は15年9月に米ニューヨークの本部で開いた国連サミットで、30年までに達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した。貧困や飢餓の廃絶、質の高い教育の確保、国内と国家間の不平等の是正など、17項目のゴール(目標)を掲げている。

 県は、これまでの国連の取り組みから、SDGsの次の目標が30年ごろに決まり、達成時期は45年に設定される可能性が大きいとみている。次の目標で、新たに核兵器のない世界の実現が盛り込まれるよう、広島から呼び掛ける考えだ。

 国連への働き掛けは、国の支援事業に基づいてまとめた「県SDGs未来都市計画」に盛り込んだ。次の目標づくりをにらみ、20年に構想を発表し、取り組みを進めるとの行程表を示す。平和に貢献する企業や団体のネットワークづくり▽SDGsに関心を持つ起業家を支えるビジネスモデルの確立▽世界の若者に向けた平和学習の機会の提供―の三つの事業を進める。

 県の呼び掛けで国内外の経済人や非政府組織(NGO)の関係者たちが広島市中区に集う「国際平和のための世界経済人会議」(11月5、6日)で、持続可能な平和の実現を支える基盤づくりを意見交換する。

 県は本年度、内閣府から3500万円の交付金を受ける。県平和推進プロジェクト・チームは「核兵器のない世界は、国際平和と安全を維持するために力を合わせるとする国連憲章にも合う。国連には核兵器保有国も加盟し、実現へのハードルは高いが、取り組みを加速させる」としている。

 平和首長会議は20年までの核兵器廃絶を実現する「2020ビジョン」を掲げて署名や各都市の市民への啓発などを進めている。被爆者団体などは一日も早い廃絶を掲げて運動してきた経緯があり、被爆地からの発信として連携が欠かせない。県は「20年の達成を最後まで目指すが、日程面などでかなり厳しいという現実もある。次なる目標として、被爆100年の節目までには何としても廃絶させる」としている。

SDGs未来都市
 国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を促そうと、国が自治体の取り組みを支援する事業で、内閣府が2月に創設した。採択された自治体は、2018年度の国の地方創生交付金について、追加で申請できる。中国地方5県では広島県のほか、宇部、岡山、真庭の3市が選ばれた。宇部市は子どもの貧困対策の一環で学習支援などを実施。岡山市はスマートフォンを使った小児医療相談などに取り組む。真庭市は木質バイオマス発電の活用などを目指す。

「核兵器のない世界」の実現に向けた広島県の行程表

2018年 「県SDGs未来都市計画」を策定。国連が次の目標に「核兵器のない世界」を掲げるよう、県として       取り組むと明記

  20年 国連の次の目標づくりに向けた、県の構想を発表

  30年ごろ 国連が次の目標で核兵器廃絶を設定

  45年 「核兵器のない世界」を達成

(2018年11月2日朝刊掲載)

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