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舟入高演劇 佐伯さん描く 「ヒロシマに歳はない」 思い継ぐ

親族13人が犠牲/原爆供養塔見守る

 毎年、原爆劇の創作に取り組んでいる舟入高(広島市中区)演劇部が、昨年10月に97歳で亡くなった被爆者、佐伯敏子さんの生き方を追う新作を完成させた。親族13人を原爆で失った体験を語るとともに40年以上にわたり、平和記念公園の原爆供養塔前で清掃活動を続けた佐伯さん。その思いを次世代に伝える。(山本祐司)

 10月27日に沼田高(安佐南区)であった広島地区高校演劇研究大会が初演となった。題名の「またあいましょう」は、佐伯さんが別れ際によく投げ掛けた言葉から引用した。前半は供養塔に眠る遺骨を遺族の元へ届けようと尋ね歩いた戦後の佐伯さんを描く。後半は郊外から広島市中心部に入り、肉親を捜し回った被爆体験を語り、核兵器廃絶を訴える姿で幕を閉じる。

 佐伯さん役を演じた2年の篠崎あか音さん(17)はテープに残る本人の声を繰り返し聞いて練習した。帽子や眼鏡などで本人に扮(ふん)し、佐伯さんが生前、訴えていた「ヒロシマに歳(とし)はありません」というせりふに特に力を込めた。「大きな傷を抱えながら証言を続けた勇気を感じてほしい」と篠崎さんは望む。

 新作はノンフィクション作家の堀川恵子さんが2015年に出版したルポ「原爆供養塔」を読んだ演劇部顧問の須崎幸彦教諭(62)が構想を温め、部員たちと話し合って今年のテーマに決めた。演出担当の2年赤畑利奈さん(17)も「後輩も意見を出し合い、演技やせりふを磨いた」と話す。

 佐伯さんの知人も演劇化に協力した。東京都立川市の元高校教諭、竹内良男さん(70)は初演を見に駆け付け「佐伯さんが生きているかのよう。知る人が少なくなる中、よく演じてくれた」と目を潤ませた。

 今月10日、尾道市のしまなみ交流館で開かれる広島県高校総合文化祭演劇部門でも上演する。

(2018年11月5日朝刊掲載)

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