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毒ガス被害者 進む高齢化 大久野島で死没者慰霊式

 大久野島(竹原市忠海町)にあった旧日本陸軍の毒ガス製造工場で従事していた被害者を悼む死没者慰霊式が8日、島内の慰霊碑一帯であった。元従業員や学徒たちの平均年齢が初めて90歳を超えたことが県のまとめで分かり、「負の歴史」の記憶継承に向けて関係者は焦りを募らせる。

 式は被害者8団体と周辺の8市1町でつくる大久野島毒ガス障害者対策連絡協議会(会長・今栄敏彦竹原市長)が主催。被害者や遺族計約60人が参列した。連絡協の神明正明副会長(86)=三原市=が、8団体の会員のうちこの1年間に亡くなった63人の名前を加えた3924人の死没者名簿を慰霊碑に奉納した。

 平均年齢は国の健康管理手帳を持つ人のデータから県が算出した。10月1日現在で90・0歳。前年の89・2歳から0・8歳上昇した。手帳の所持者は1461人で、176人少なくなった。工員など旧陸軍関係者たちが293人(平均93・0歳)、学徒動員された人たちが1168人(同89・3歳)。地域別では県内在住が1090人、県外が371人だった。

 学徒動員されて島での作業に従事した神明副会長は「高齢で体調が優れない人が増え、証言活動ができる人は今は数えるほどしかいない。あらためて当時の記録を残すための方法を行政と一緒に考えたい」と話した。(山田祐)

(2018年11月9日朝刊掲載)

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