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平和教育・研究の拠点に 市有識者懇で提案 旧広島大理学部1号館

 広島大本部跡地(広島市中区)の被爆建物、旧理学部1号館の活用策を巡り、市の有識者懇談会は26日、広島大と市立大の平和研究機関を1号館に移転し、新たに「ヒロシマ平和教育研究機構」(仮称)の設置を求める提案を明らかにした。跡地での市と広島大による「知の拠点」構想の柱とし、平和に関する国際的な研究、教育や交流の拠点とする狙い。市は今後、両大学と協議を進める。(明知隼二)

 提案では、1号館に広島大平和センター(中区)と市立大広島平和研究所(安佐南区)の一部または全部を移転。研究者が国内外の研究者と共同で、被爆地ならではの研究プロジェクトを進めるとしている。

 平和教育に関しては、国内外の大学院生を対象にした広島への留学制度や、地域内の大学と連携した新たな平和科目の提供などを掲げている。1号館に関する被爆資料の展示や、世界の被曝(ひばく)に関する学術的な情報提供の拠点とするアイデアも盛り込んだ。

 この日、中区であった有識者懇談会で、事務局の市が1号館の活用策を協議してきた有識者検討会の提案を報告した。委員からは「知の拠点に沿う提案だ」と前向きな受け止めがあった一方、「機構の新設は大きな展開だが、市は本当に意気込みがあるのか」と実現性を問う声も上がった。

 座長の高田隆・広島大副学長は懇談会の終了後、機構について「方向性は(大学同士で)共有しており、実現性は高いと考えている。学都広島の象徴として、研究・教育の機能を発揮できれば」と話した。市都市機能調整部の長光信治部長は「提案と懇談会の意見を踏まえ、知の拠点の核として活用されるよう取り組む」としたが、実現を目指す時期は示さなかった。

 広島大本部跡地は計11・4ヘクタール。2006年に広島地域大学長有志懇談会が市に提案した「ひろしまの『知の拠点』再生プロジェクト」を踏まえ、高層マンション建設など再開発が進む。1号館については市が17年3月、正面部分を保存する方針を決定。ことし2月、有識者検討会を設け、非公開で活用策を議論していた。

旧広島大理学部1号館
 1931年に広島文理科大本館として建設。鉄筋3階建て延べ約8500平方メートル。爆心地から約1・4キロで被爆し、外観を残して全焼。戦後に補修され、49年の広島大開学で理学部1号館となった。同大の東広島市への統合移転に伴い91年に閉鎖。93年度に被爆建物に登録された。広島市は2013年4月に建物と敷地の無償譲渡を受け、14年の市の調査で震度6強の地震で倒壊の危険性があると判明。市はE字形の建物のうち少なくとも正面の棟をI字形に残し、平和教育・研究と交流を基本とした複合施設とする方針を決定。解体や耐震化など概算改修費を18億5千万円とする。

(2018年11月27日朝刊掲載)

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