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[こちら編集局です あなたの声から] 午前5時台 謎の航空機騒音

住民「情報ないのが一番不安」

広島や廿日市

 「午前5時台に航空機が飛ぶ大きな音で目が覚めた。何の音?」。11月28日から今月6日までに、無料通信アプリLINE(ライン)でこうした声が4件、編集局に寄せられていた。広島県西部の自治体に聞くと、広島市と廿日市市にも同様の情報が計22件届いていた。暮らしの上空で夜明け前に、何が、どんな目的で飛行していたのか。取材は難航した。

 LINEは安佐南区と安佐北区の読者から届いた。「ここ1、2週間、毎日のように聞こえる」「音に敏感になった」「とても不安」…。

 広島市に届いた情報は12件。平和推進課の古川祥久主事は「午前5時台の航空機の騒音情報は極めてまれ」といぶかった。廿日市市には10件寄せられた。

 消去法で音の出どころを探った。広島空港事務所、広島市消防局の消防航空隊、第6管区海上保安本部広島航空基地、ドクターヘリを管轄する県の担当課…。いずれも飛行の事実はなかった。

 中国四国防衛局の武内哲也報道官は「事実を確認中。2、3カ月はかかる」。海上自衛隊岩国基地の紺谷泰久広報室長は「運用に関することには答えられない」。米軍岩国基地は岩国市に対し、11月21日から12月上旬まで運用時間(午前6時半~午後11時)外に航空機が離着陸する可能性があると通知していた。「広島市上空を飛んでいるのか」など記者がメールで質問したが、6日夜までに回答はない。

 取材の分厚い壁を実感していたところに、米軍機事故のニュースが飛び込んできた。LINEで連日情報を寄せてくれた安佐南区の主婦坂田加奈枝さん(47)は、「事故との関連は分からないけど、えたいの知れない音への怖さは増した。気持ち悪いったらないです」と受け止める。

 「情報がないことが一番不安をかき立てる」と、「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会」の坂本千尋共同代表(65)=廿日市市=は強調する。「国は住民の気持ちにもっと寄り添い、積極的に情報を集めて公開してほしい」(新本恭子、松本恭治)

(2018年12月7日朝刊掲載)

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