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「もし市街地に落ちたら」 米軍機事故 市民に危機感 岩国所属 11月にも

 高知県沖で海兵隊機同士が接触、墜落した6日、両機が所属する米軍岩国基地がある岩国市では不安が広がった。基地所属機は11月にも那覇市沖で墜落した。今春に米海軍の空母艦載機の移転完了で極東最大級の航空基地となり、騒音被害の懸念も高まる中での相次ぐ事故。「またか」「市街地で落ちていたら」。市民の危機感は募るばかりだ。(馬上稔子、加田智之、藤田智)

 「最近は夜中にゴォーとすごい音がすることもあるし、ここに落ちてこなければいいが」。岩国市の芳村静子さん(82)は表情を曇らせる。市中心部の麻里布町に住む派遣社員男性(60)は「市民が巻き込まれてからでは遅い。市や国は米に強く言うべきだ」と訴えた。

 事故との因果関係は不明だが、墜落直前の6日午前1時前、岩国市中心部に突然ごう音が響いた。窓を閉めた屋内でもはっきり聞こえ、多くの住民が跳び起きた。市が基地周辺に設置する騒音測定器は0時54分に91・0デシベルを計測。さらに早朝にかけ基地周辺で断続的に測定された。2機の墜落事故が広く市民たちに伝わった日中も米軍機は滑走路で離着陸を繰り返した。

 岩国基地では3月に厚木基地空母艦載機約60機の移転で所属機は約120機に倍増。騒音の懸念に加え、同市平田の広津俊明さん(67)は「数が増えたのだから、岩国基地所属機が事故を起こす確率は高くなる」と懸念。同市周東町のパート女性(45)は「安全を徹底して」と訴える。

 11月12日には艦載機FA18スーパーホーネット戦闘攻撃機が那覇市沖で訓練中、エンジントラブルで墜落。1カ月足らずで2度の重大事故を起こした。市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の桑原清共同代表(79)は「もし瀬戸内海の近海や市街地だったら大変なことになる」と懸念を強めた。

 今回のFA18だけでなく、岩国基地に所属、飛行するのと同型の輸送機オスプレイやステルス戦闘機F35Bなどの事故も各地で相次ぐ。基地監視団体リムピースの田村順玄共同代表(73)は「異常事態」と警鐘を鳴らす。「まずは飛行停止してもらわないと安心できない」と強調した。

 市民団体「住民投票を力にする会」は急きょ、米軍機の飛行中止などを米と政府に求めるよう市に申し入れた。松田一志代表(61)は「米軍はいつも再発防止に努めるというが事故を繰り返している」と批判した。

【米軍岩国基地に絡む主な事故やトラブル】

2016年 9月 海兵隊のAV8Bハリアー攻撃機が沖縄県沖で墜落
     12月 海兵隊のFA18ホーネットが高知県沖の太平洋上で墜落
  17年 6月 海兵隊のFA18、3機が航空自衛隊松島基地(宮城県東松島          市)に緊急着陸
     11月 海軍の空母艦載機C2輸送機が岩国基地を出発後、沖ノ鳥島沖          の公海上で墜落
  18年 4月 海兵隊のステルス戦闘機F35Bが、航空自衛隊築城(つい          き)基地(福岡県築上町)に緊急着陸
      5月 海軍の空母艦載機FA18スーパーホーネット戦闘攻撃機が空          中給油機の部品の一部を機体に付けたまま飛行し、同基地に着          陸
     11月 海軍の空母艦載機スーパーホーネットが那覇市沖で墜落
     12月 海兵隊のFA18とKC130空中給油機が高知県沖の太平洋          上で接触し墜落

(2018年12月7日朝刊掲載)

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