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「核廃絶の後押しに」 ローマ法王広島訪問意向 被爆者ら歓迎

 「核兵器のない世界」実現への後押しに―。ローマ法王フランシスコが来年の終わりごろに訪日し、被爆地の広島・長崎を訪れたいとの意向を示したことが明らかとなって一夜明けた18日、広島の被爆者たちから歓迎の声が相次いだ。(水川恭輔、中川雅晴)

 「核兵器廃絶の機運を高める好機。広島の官民が協力して盛り上げる動きが広がれば」。国内外で被爆体験を証言してきた七宝作家の田中稔子さん(80)=広島市東区=は力を込める。

 訪問が実現すれば、1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来。市は当時、記念品として田中さんの七宝焼作品を法王に贈った。田中さんは法王が平和記念公園で核兵器廃絶を訴えた「平和アピール」を聞き、対面の機会もあった。

 当時の広島県警調べでは、同公園には約2万5千人が詰め掛けた。「(カトリック教会の)信者かどうかを超えて、多くの市民がアピールに感動した」と田中さん。2度目となる訪問がかない、廃絶を目指す市民の輪を広げることを願う。

 法王フランシスコは2013年の就任以来、繰り返し廃絶を訴え、ローマ法王庁(バチカン)は昨年国連で採択された核兵器禁止条約を批准している。広島県被団協の佐久間邦彦理事長(74)は「被爆地で日本政府などにも批准を呼び掛けてほしい」と期待する。

 もう一つの県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)は各国が5年に1度、核軍縮策を議論する20年春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議を控えた「19年終わり」の時期にも注目。「重要な20年に向け、世界に核兵器の恐ろしさと廃絶を訴えてもらいたい」と話す。

 カトリック教会の信者は十数億人とされ、世界的影響力があるだけに、松井一実市長は昨年11月、広島県の湯崎英彦知事は同5月、バチカンを訪れて法王に被爆地訪問を要請していた。松井市長はこの日市役所で記者会見し、「法王のメッセージは強烈なインパクトがある。被爆地の思いをあらためて受け止め、感想も交えて発信してもらえれば」と述べた。

 湯崎知事も会見で「核軍縮を取り巻く状況が厳しい中で、廃絶に向けた国際的な機運を高めていく大きな力になる」と歓迎。市や県警と連携し、受け入れ準備を進める考えを示した。

(2018年12月19日朝刊掲載)

社説 ローマ法王 被爆地へ 核兵器廃絶の追い風に

「核兵器全廃」約束せよ 広島から平和アピール ローマ法王、慰霊碑に祈る(1981年2月25日朝刊掲載)

“ヒロシマの悲劇”いま直視 法王 被爆資料に大きな衝撃 絶句、悲痛な表情(1981年2月26日朝刊掲載)

教皇ヨハネ・パウロ二世 広島「平和アピール」(広島にて 1981年2月25日)

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