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広島—長崎 中間点から平和を発信 福岡県上毛町

広島東南ロータリークラブ、町と連携

9月 公園に被爆樹木の苗

 広島と長崎の二つの爆心地の距離は、直線で結ぶと約300キロ。中間点が、福岡県の東端に当たる上毛町(こうげまち)にある。その縁で人口7600人余りの農業の町に、平和推進の拠点をつくる計画が動きだした。提案した広島東南ロータリークラブ(吉田信秀会長)が町などと連携し、9月に被爆樹木の苗木を植樹する。(増田咲子)

 植樹するのは町内の大池公園。農業用のため池があり、1・5キロほどの周回する遊歩道がある。近くに東九州自動車道のスマートインターチェンジ(IC)ができ、町が観光拠点として再整備している。

 計画によると、池に突き出した二つの部分を利用する。広島で被爆したイチョウ、クロガネモチ、エノキ、ツバキの苗木を植える「広島ゾーン」と、長崎の被爆クスノキの苗木などを植える「長崎ゾーン」を設ける予定という。

 同ロータリークラブは被爆75年の2020年に設立60年を迎え、その記念事業となる。中間点のアイデアを思い付いたのは創立60周年行事実行委員長で、建築家の錦織亮雄さん(81)=広島市西区。白島中町(現中区)の自宅で被爆し、建物疎開に出ていた姉が原爆で死亡している。

 昨年4月、坪根秀介町長に会って賛同を得た。町は「広島・長崎爆心地中間点上毛町―未来へつなぐ平和の架け橋」事業と位置付けて、モニュメントの設置も検討している。国連が定める「国際平和デー」の9月21日に記念式典を開催。広島、長崎両市や地元の子どもたちにも参加してもらいたいという。町開発交流推進課は「平和を発信する拠点に」と期待する。

 福岡県は原爆とは無縁ではない。長崎に投下された2発目の原爆は、現在の北九州市小倉北区にあった陸軍造兵廠(しょう)が第1投下目標。1945年8月9日朝、視界が良ければ小倉が被爆地となっていた。その歴史を意識して「中間点」の事業に協力する人たちもいるという。

 錦織さんは「平和のメッセージを沈黙で語る被爆樹木の2世を通じ、原爆だけでなく世界の戦争についても考えるきっかけにしてほしい」と話している。

(2019年1月21日朝刊掲載)

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