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法王発 平和メッセージを 前田枢機卿に聞く 被爆地訪問に期待

 昨年12月にローマ法王フランシスコとバチカンで面会した前田万葉枢機卿(69)が22日、カトリック大阪教区本部(大阪市)で中国新聞のインタビューに応じた。法王は今年終わりごろに訪日し、広島と長崎の両被爆地を訪れる意向で、前田枢機卿は「戦争を否定する強いメッセージを被爆地から発してほしい」と期待した。(明知隼二)

  ―面会では、被爆地訪問についてどのような発言がありましたか。
 長崎、東京の大司教と一緒に教皇(法王)の執務室で会った。長崎で「核兵器は使用だけでなく、造ることも倫理に反する」との廃絶メッセージを出したいと言われた。広島では「(仏教など)他の宗教者たちとの対話を」との考えだった。こちらからは、両被爆地で平和のメッセージを出すようお願いした。

  ―日程や訪問先は決まったのでしょうか。
 11月中旬に新天皇即位の関連儀式があるので、11月終わりごろの可能性が高いとみている。東京と広島、長崎の訪問は確実だが、具体的な内容は日程次第だ。教皇は若者との集いを希望しているので、広島で設定したいとの思いはある。沖縄や、東日本大震災の被災地からも訪問の要望がある。

  ―法王の訪問にどんな期待を持っていますか。
 教皇は、毎年1月1日の「世界平和の日」を前にメッセージを出している。今年は「政治が平和を脅かすこともある。平和に寄与するのが良き政治だ」と厳しく指摘した。教皇は自らの発信の重みを理解しており「批判があっても言わなくてはならない」との強い思いを持っている。

 被爆地からのメッセージにも、核兵器廃絶には政治の役割が大切だとの内容が盛り込まれると思う。廃絶に向けた希望が持てるような発信になってほしい。

ローマ法王の広島訪問
 故ヨハネ・パウロ2世が1981年、法王として初めて広島を訪問し、原爆慰霊碑前で核兵器廃絶を訴える「平和アピール」を発表した。現在のフランシスコ法王は2013年の就任後、繰り返し廃絶を主張。17年にローマ法王庁(バチカン)として核兵器禁止条約を批准した。広島市、広島県は法王への一般謁見(えっけん)などで広島訪問を要請。法王が18年12月の前田万葉枢機卿との面会で訪れる意向を表明した。

(2019年1月23日朝刊掲載)

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