イージス電波調査とは 周辺施設からの影響探る
19年2月7日
配備候補地の萩で開始 レーダー電磁波 住民懸念
地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画で、防衛省は今月から候補地の陸上自衛隊むつみ演習場(萩市)で電波環境調査を始めた。周辺の通信施設からの電波干渉や健康被害の有無を調べる。一方、住民からはレーダーが発する電磁波の影響を懸念する声が根強い。調査の目的や地元の反応をまとめた。(和多正憲)
■使用状況調査(2~10日)
公共施設や携帯電話基地局の電波が演習場内の自衛隊の無線施設にどの程度の干渉を与えるのかを見る。場内8カ所で測定器を使い、1カ所当たり24時間調べる。
これとは別に演習場のある萩市と阿武町を委託業者が回り、公共・民間の無線施設などの配置場所を確認する。いずれも場内からは電波を発信しない。
■実測調査(2月下旬~3月上旬に4日間)
イージスは弾道ミサイルを捕捉する際、レーダーから強力な電波を発する。この電波の人体への影響を調べるため、陸自が所有する移動式の対空ミサイルシステムを場内へ運び込み、実際にレーダーから電波を発信する。
イージスと同じ周波数帯の電波を上空へ照射し場内で電波の強さを測定。イージスのレーダー出力より弱いため、場外の民家などに影響はないという。
国は当初、イージスのレーダー照射に伴う人体への影響をコンピューターによる試算だけで調べる予定だった。これに対し、地元からは「シミュレーションで大丈夫か」と反発の声が上がり、追加で実測調査を決めた。
■阿武町では配備反対の会
萩市の藤道健二市長は追加調査を「住民の声に真摯(しんし)に対応した」と評価する。阿武町の花田憲彦町長も調査に一定の理解を示すものの「配備反対の考えは変わらない」と強調する。
国は8、9の両日、萩市と阿武町の住民を招き、演習場で説明会を開く。同市の住民団体の森上雅昭代表(66)は「実測調査は『シミュレーションだけじゃない』という国の実績づくり。ごまかしだ」と指摘。3日に配備反対の町民の会を設立した吉岡勝会長(65)も「電磁波の不安は解消されていない。反対の声を地域全体に広げたい」と訴える。
(2019年2月7日朝刊掲載)