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原爆ドームの保存工事延期 入札不調 19年度以降に

 劣化が進む世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)の保存工事について、2月の入札が不調となった影響で、2018年度に予定していた着工が19年度以降にずれ込むことが2日、分かった。市は要件の変更を検討し、入札をやり直す。建設業界の人手不足が原因の一つとみられ、昨年9月に旧日本銀行広島支店(中区)の復元工事も不調になるなど、被爆建物の事業に影響が広がっている。

 市は18年度当初予算に工事費5800万円を盛り込み、鋼材の塗り替えや壁のれんがの目地の補修、窓部分の柱の補修などを予定していた。2月中旬、全国の12業者を対象に指名競争入札を実施したが、全社が辞退。保存工事の延期を余儀なくされた。

 市は業者の参加を促すため、要件の緩和などを検討するとしており、公園整備課は「来年度のなるべく早い時期に入札を実施したい」としている。

 不調の背景には、20年の東京五輪・パラリンピックによる全国的な建設業界の人手不足があるとみられる。被爆建物を巡っては、旧日銀広島支店の復元工事で17年10月、18年3月、9月と入札を実施したが、決まっていない。同7月には西日本豪雨も発生。広島県内の復旧工事では、参加業者が集まらない「不調」や入札額が予定価格を上回る「不落」が相次いでいる。

 市は原爆ドームの大規模補修や耐震工事を不定期に実施しており、今回は15年11月~16年7月に続いて5回目となる。(江川裕介)

原爆ドームの保存
 1915年、広島市中心部の元安川沿いに「広島県物産陳列館」として完成し、33年、県産業奨励館に改称。45年に被爆し、96年には世界遺産に登録された。市は67年、内部から壁面を支える鉄骨の設置や補強のためのエポキシ樹脂注入など、初の保存工事を実施。その後、89、2002、15年と工事を重ねている。併せて大学教授たちでつくる保存技術指導委員会で補修方法を検討。18年度内の着工を予定していた5回目の保存工事を巡っては、建設時から残る鋼材のさびを化学処理してから塗装するなど、具体的な工法について18年9月の委員会で合意していた。

(2019年3月3日朝刊掲載)

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