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米朝会談 要求は明確化 広島市立大広島平和研究所・孫准教授に聞く

非核化 実務者協議十分に

 ベトナム・ハノイで2月末にあった米朝首脳会談は、合意文書をまとめられずに終わった。北朝鮮の非核化に向けた協議は進むのか。韓国統一省の元専門官で、北朝鮮情勢に詳しい広島市立大広島平和研究所(安佐南区)の孫賢鎮(ソン・ヒョンジン)准教授(47)=国際法=に聞いた。(明知隼二)

  ―トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の会談の結果をどう評価しますか。
 北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄を唯一の交渉カードに、経済制裁の解除を求めた。米国は近くにある秘密施設も含めて廃棄を求めたとされる。合意には至らなかったが、少なくとも互いの要求を明確にすることはできた。

  ―合意への楽観的な観測もありました。
 昨年6月の会談はあくまでも大枠の合意。成果を出すには事前の実務者協議の時間が短すぎた。トランプ氏は来年に選挙を控え、中国との貿易交渉など国内外で難題を抱える。北朝鮮に急いで譲歩しない方が有利に働くと考えたのだろう。

  ―北朝鮮はこれまで、何度も非核化に向けた合意を覆してきました。
 今回は本気で協議に臨んでいると思う。経済制裁で国内経済は厳しく、体制の維持に影響が出ている。米国はそれを見透かし、優位に交渉を進めている。

  ―次のステップはどのようなものになりますか。
 米国は少なくとも、寧辺を含む核施設、核兵器を含む大量破壊兵器、保有する大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの完全な申告を求めるはずだ。国際原子力機関(IAEA)を中心とした査察を受け入れれば、連絡事務所の設置、朝鮮戦争の終戦宣言などの段階に進める。核の廃棄や制裁解除はその次の段階で、かなり時間がかかるだろう。

  ―韓国の会談への前向きな姿勢が目立ちました。
 私は会談時、統一省を訪ねていた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮との平和構築を優先し、非核化はその後についてくると考えている。会談を受けて金委員長のソウル訪問、さらに経済交流の再開につなげようとしていた。狙いは外れたが、省内は引き続き南北関係の改善に集中しようという雰囲気だった。

  ―今後をどう見ますか。
 まずは南北首脳会談で、韓国が米国の意図を改めて伝えることになるだろう。次の米朝会談に向けては、申告リストを確かなものにするため、今度こそ実務者協議に時間をかける必要がある。恐らく米国の要求は変わらない。北朝鮮がどこまで本気で踏み込めるかが大事で、韓国がどう説得に動くかにも注目したい。

(2019年3月7日朝刊掲載)

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