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裾野広げる努力続く ヒバクシャ国際署名 「集めるほど説得力」

 核兵器の完全廃絶を求めて日本被団協(東京)が呼び掛ける「ヒバクシャ国際署名」が、開始からもうすぐ3年を迎える。昨年9月時点で計830万人分が集まった。それ以降に回収した分は今月末時点の数字として集計し、用紙を4月29日から米国ニューヨークの国連本部で始まる核拡散防止条約(NPT)準備委員会に持ち込む。「一筆でも多く」。裾野を広げる苦心と努力が続く。(金崎由美)

 「被爆体験を伝える活動に尽力してきた方として、さらに一歩、署名を広めるためのご協力をお願いしたい」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧智之理事長代行(77)、東京の非政府組織(NGO)ピースボートの川崎哲共同代表ら5人が安楽寺(広島市東区)に前住職の登世岡浩治さん(89)を訪ね、語り掛けた。

 登世岡さんは「被爆し弟を亡くした。高齢だが、できるだけ協力したい」と応じた。後日、100枚余りの署名用紙と返信用封筒を周囲に配布。少しずつ手元に戻り始めているという。

 一行は浄土真宗本願寺派の安楽寺のほか、立正佼成会広島教会(東区)や浄土宗妙慶院(中区)も訪れた。提案した堺市の浄土宗の僧侶森俊英さん(56)は「多く集めるほど、米国の核抑止力を重んじる日本政府に対して『政策変更こそが大多数の国民に支持される』という説得力を持つ」と署名の意義を強調する。

 広島では昨春、もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)や市原爆被害者協議会を含む被爆者7団体と県生協連合会などが、県推進連絡会を設立。街頭署名や、県内約80の賛同団体を通じた署名集めを展開し、より多様な団体や人たちに働き掛けている。県内の目標は、140万人分。国際署名全体では、2020年まで定期的に集計しながら世界で数億人分を集め、国連に持ち込む。決して簡単ではないことも確かである。

 岡田恵美子さん(82)=東区=はことし、被爆体験の証言活動で米国ペンシルベニア州の大学を訪問。学生たちに協力を求めた。自らの体験に加えて、米国内にも核実験被害者がいる実態も説明した。「原爆被害は人ごとでないと知ったら、署名してくれると思う。用紙をはさんで相手と対話できるのが、署名の良さ」と岡田さん。「被爆者が生きているうちの廃絶」へ、決意を新たにする。

(2019年3月18日朝刊掲載)

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