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連載・特集

艦載機移転1年 <上> 機影の街

爆音対策に不公平感 確認事項修正見通せず

 南から飛来する米軍機が海側へ大きく旋回するたびに激しい爆音がとどろく。「電話が聞こえなくなるのが一番困る。会議を中断することもありますよ」。岩国市飯田町で化成品製造会社を営む村上晃徳さん(47)は社員10人ほどが働く事務所内で明かした。

「住宅」に限定

 米軍岩国基地の滑走路北端から約1・5キロ。事務所は国が防音工事費を助成する「うるささ指数(W値)」75以上の第1種区域だが、防音工事は施されていない。国は対象を「住宅」に限定しているからだ。

 厚木基地(神奈川県)から移った空母艦載機の大半を占めるFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機は従来型ホーネットよりエンジン出力が大きい。厚木周辺の騒音被害の主因とされた機体が離陸するたび、近くの事務所や店舗内にジェット音が降り注ぐ。

 第1種区域の同市元町で米穀店を30年間営む弘津陽子さん(80)は「日中の多くは店にいるが、新しい戦闘機の音はすごい。防音工事の対象にならないのは不公平」と思いを吐露する。

 防音工事対象の事務所・店舗への拡大は、艦載機移転に絡み市が2008年10月に国へ求めた43項目に上る安心安全対策の一つだ。同様に要望した住宅防音工事の区域拡大は一定の成果を引き出しており、福田良彦市長は次なる重要課題と位置付ける。今年2月下旬の市議会初日の施政方針演説でも言及した。

 議会側の関心も高い。今月6日の一般質問。議員の一人は「なぜ住宅と事務所・店舗にそれほど差がつくのか。困っている人がたくさんいる」と声を張り上げた。福田市長は「大きな進展が見られるようにしっかりと国に働き掛けたい」と答弁を締めくくったものの早期実現は容易ではない。

一部は形骸化

 艦載機の移転完了という大きな環境変化は、米軍機の運用ルールの課題も浮かび上がらせた。市や国、基地でつくる岩国日米協議会の確認事項の一部は形骸化し、守られないケースも目立つ。にもかかわらず協議会は1991年を最後に一度も開かれていない。

 そうした中で市は昨年5月、協議会の開催や確認事項の修正を検討するため国や米軍と事務レベルの協議を開始した。一時は順調に進み、関係者には「年明けにも結論が出るのでは」との期待もあった。だが詰めの段階で米側との調整が難航しているのか、いまだ成果は示されない。

 難しい状況は福田市長の議会答弁にもにじむ。昨年12月は「できるだけ速やかに結論を出したい」と意気込んだが、3カ月後には「市と米軍の双方が納得いく形にまとめることができるよう努力したい」とトーンダウンした。

 本年度、今月27日までに市へ寄せられた基地関連の苦情は6509件。過去最多だった17年度(3543件)の1・8倍と激増した。安心安全をどう確保するのか。もどかしさを抱えたまま基地の街は新年度を迎える。(松本恭治)

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 極東最大級の航空基地に変貌し、まもなく1年となる米軍岩国基地。空母艦載機の移転完了が地域に与えた影響や課題を探る。

(2019年3月29日朝刊掲載)

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