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[ジュニアライターがゆく] カンボジア支援 広島でできること

 カンボジアは、1970~90年代の内戦で市民が大きな被害(ひがい)を受けました。国家元首だったシアヌークの追放、ポル・ポト派による200万人ともいわれる虐殺(ぎゃくさつ)、隣国(りんごく)ベトナムの軍事介入(かいにゅう)など、とても長く、複雑な対立が続きました。その間、大量の地雷(じらい)が埋(う)められ、現在も国の復興と発展を妨(さまた)げています。子どもの貧困と経済格差(かくさ)の原因でもあります。中国新聞ジュニアライターは、カンボジアに寄り添(そ)って支援活動を続ける広島ゆかりの人たちを取材しながら、ヒロシマの私(わたし)たちに何ができるのか考えました。

学ぶ

地雷除去 住民とともに 400万~600万個 復興阻む現状

 地雷とは、地中に埋めておき、人や車がその上を踏(ふ)むと爆発(ばくはつ)して危害を加える仕掛(しか)けの兵器です。内戦時に民家周辺や畑に大量に埋められました。

 約400万~600万個が地中に残っているとみられています。土地が使えず、復興が遅(おく)れます。手や足を吹(ふ)き飛ばされた住民は働けず、貧困に苦しみます。子どもたちの被害も、後を絶ちません。

 松山市のNPO法人「国際地雷処理・地域復興支援の会」理事長で元自衛官の高山良二さん(71)は、17年前から現地で地雷除去(じょきょ)のボランティア活動をしています。広島市内であったトークショーで、話を聞きました。

 1992年に半年間、国連平和維持活動(PKO)でカンボジアに派遣(はけん)されました。「やり残したことがある」という悔(くや)しさから、退官後に活動を始めたそうです。除去活動は、カンボジア人と一緒に取り組みます。住民参加型にしているのは、「元は自分たちが埋めた地雷だという現実を理解し、争いを繰(く)り返さないでほしい」からです。

 トークショーを開いたのは、広島のテレビ番組で活躍(かつやく)するフリーアナウンサーの久保田夏菜さん(32)です。高山さんの活動に感銘(かんめい)を受け、2010年からカンボジアを毎年訪れています。子どもたちを撮影(さつえい)して番組で流したり、ラジオで話したりしています。

 「住民が平和を求めて行動する様子を多くの人に知ってもらいたい」と久保田さんは言います。現状に関心を持ち、発信することで支援の輪は広がります。

聞く

広島大の歯科医 子らの健康守る 6割「5歳まで歯磨きせず」

 真っ黒になっていたり、リンゴの芯(しん)のように削(けず)れていたり…。カンボジアで歯科検診(けんしん)などに取り組む広島大の小児歯科医の岩本優子さん(34)を訪(たず)ねると、現地の子どもたちの歯の写真を見せてくれました。国民の約60%が5歳まで歯を磨(みが)いたことがないそうです。

 カンボジアでは1970年代後半に、ポル・ポト政(せい)権(けん)が都会の住民や知識人を敵視(てきし)し、虐殺しました。そのため人材が不足し、歯科医も足りません。住民が家庭や学校で歯磨きを習い、検診を受ける機会がほとんどないのです。岩本さんは「親世代が歯磨きという行為(こうい)を知らず、子どもに教えることができない。支援はそこから始まる」と言います。

 岩本さんはほかの民間団体などと協力して、10年前に「カンボジアのこどもたちの歯をまもるプロジェクト」を始めました。毎年現地の小学校を訪れ、歯の状態の確認(かくにん)や、簡単な処置(しょち)をしています。広島大の学生や若手の歯科医も参加し、これまでに延べ約1万2千人の歯を診(み)ています。

 カンボジア人が自分たちで歯の治療を行えるよう、現地の教員や学生を支援しています。子どもの健康を守り、人材を育てることも素晴らしい貢献(こうけん)です。

考える

情勢調べ発信したい

 原爆の被害(ひがい)を受け、苦労しながら復興した被爆地からは、市民が首都プノンペンに平和交流施設(しせつ)「ひろしまハウス」を建てるなど、さまざまな支援が行われています。私たちヒロシマの子どもにできることを考えました。一つでも実行したいと思います。

 ①新聞やインターネットで調べた現地の情勢を友達に話す

 ②カンボジアの子どもたちと文通したい

 ③お小遣(づか)いの範囲(はんい)で、支援団体に寄付する

 ④文房具などの学用品を送る

 ⑤現地で作られた雑貨や食べ物をお店で見つけたら買う

私たちが担当しました

 中3岡島由奈 中3桂一葉 中3林田愛由 高1平松帆乃香 高2目黒美貴 高3平田佳子

(2019年4月16日朝刊掲載)

【取材を終えて】
 2018年3月に学校の海外研修でカンボジアに行った時、笑顔が似合う子が多いという印象を強く受けました。歯の健康状態がよくない人が約60%いると聞き、いい笑顔をしているのにもったいないと思いました。私は行ったことがあるからこそ身近に感じ、歯を健康な状態にしてほしいと願わずにはいられません。ただの自己満足に終わらず、彼らのために何が私にできるのかを考えた時、最前線で診ている歯科医の活動費の援助をすることが一番だと考えました。(高3平田佳子)

 カンボジアでの地雷処理について、作業中に事故が起こってしまった悲しい話や住民との温かい交流の話を聞きました。高山さんたちが何年も活動していても、いまだに地雷が完全になくなる見通しは立たない、ということが驚きでした。しかし、それ以上に写真で見たカンボジアの子どもたちの笑顔が頭に残りました。いつか現地へ行き、地雷処理の現状や人々の暮らしを自分の目で見てみたいです。(高2目黒美貴)

 岩本さんが「現地の人のためにやってあげたと満足していても、もしかしたらそれが裏目に出ているかもしれない」と答えていたことが印象的でした。現地に行って何かやりたい、今すぐ行動したいと焦りがちですが、自分がしようとしていることは中身の伴うことなのか熟考しなければならないと思いました。将来、自分の専門分野で社会貢献するために、今は勉強を頑張ります。(高1平松帆乃香)

 今回一番驚いたことは、カンボジアには今も400~600万個もの地雷が埋まっていることです。戦争が終わったにもかかわらず、毎日恐怖や不安が絶えない生活を想像すると、胸が痛みました。でも、たくさんの人の「カンボジアのためにできることをしよう!」という温かい思いと行動力に心から感動しました。私もジュニアライターの活動だけで満足するのではなく、現地に寄り添った継続的な支援をしたいです。(中3岡島由奈)

 高山さんが、支援をするには「辛抱」が大切だと言われました。私にできる事は、ジュニアライターを通して多くのことを学び、最後までやり遂げる事だと思いました。まだ、高山さんのように大きな活動をすることはできません。でも、記事を書くことで同世代の人が平和に興味をもってくれると思います。できるかぎり多く取材し、興味を引くような記事を書いていきたいです。(中3桂一葉)

 私は今まで、歯磨きを知らない子どもがいるということをあまり考えたことがありませんでした。毎日当たり前のように歯磨きができる今の環境に感謝しなくてはいけないと思いました。岩本さんが「中途半端に何かしようとしても自己満足に終わってしまう。まずは自分の得意分野を磨いて、それから自分にしかできないことをやるべきだ」という言葉が印象的でした。普段からどうしたら自分のできることを生かして、少しでも支援することができるのか考えていきます。(中3林田愛由)

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